翻刻
其 五
其甚(そのはなはだ)しき所(ところ)にては家数(いへかず)の
二三十も有(あり)し村〻或(むら〳〵ある)ひは
竃(かまど)の四五十もありし郷〻(さと〴〵)
にて人みな死尽(しにつく)し一人として
命(いのち)を保(たも)ちしはなきもありけり
而(そ)して其亡後(そのなきあと)を弔(とふら)ふ者(もの)も
なければ命(いのち)の終(おは)りし日(ひ)も
しれずまた死骸(しがい)も埋(うづ)め
ざれば鳥獣(とりけもの)の餌食(えじき)と
なれり庭(には)も門(かど)も叢(くさむら)と
荒(あ)れて一村(いつそん)すべて
亡所(ばうしよ)となりしも
ありと農喩(のうゆ)に
見えたり