翻刻
随分(ずいぶん)心を豊(ゆたか)に持(もち)。気を慰(なぐざ)
めて。くたびれざるほどに。日(ひ)
日(び)ありきてよし。若(もし)眠(ねむり)たへ
がたくて。たま〳〵|昼寝(ひるね)せば。
能(よく)物(もの)を着(き)て。屏風(びやうぶ)など引
廻(まは)し。ねるべし湯治(たうぢ)の間(あいだ)は。
表気(へうき)ひらき。風ひきやすけ
ればなり。浴衣(ゆかた)着(き)ながら。
打(うち)ねふりなどすべからず。湯
をむさぼるべからず。虚弱(きよじやく)の
人は。一日に二三度。壮健《割書:さうけん|わかくすこやか》【両側にふりがなあり。便宜的に割書としました】の人。
四五度に過(すぐ)べからず。湯数(ゆかず)を
のみ入りて。功(こう)有ものにあらず。
只(ただ)|日数(ひかず)を入べし。大かたの
人二廻りと志(こころざ)し。三廻をさへ。
長(なが)しと思へり。軽(かろ)き病はさも
あるべけれど。はる〴〵湯治する
人。多(おゝ)くは本来(ほんらい)の痼疾(こしつ)な
れば。いかで速功(そくこう)有べきや。三
四十日より。或(あるひ)は半年(はんねん)。一年。何(なに)
分(ぶん)|其(その)|病(やまひ)。癒(いや)るを期(ご)とすべ
し。尤(もっとも)|生質(むまれつき)丈夫(でうぶ)なる人。む
さぼり入て。しるしはやきも
あれど。後日(ごにち)にいたりて。厳(きびし)き