翻刻
|成(な)す上は。|新湯(あらゆ)|御所(こしよ)の|湯(ゆ)まん
だら|湯(ゆ)を|日本第(につほんたい)一として。|但馬(たじま)
|湯治(とうじ)とさへ|云(い)へば|此(この)三ツの湯と
|心得(こゝろへ)。あら湯|望(のぞみ)の人は中の町に
|宿取(やどとり)。|御所(ごしよ)の湯まんだら|湯(ゆ)|望(のぞみ)の
人は上の町に|宿(やど)とるべきなり
◯あら湯と中の湯との。|功(こう)
|能(のう)。|黒白(こくびやく)|明白(めいはく)なる事。|右(みぎ)に
|述(のぶ)るが如し。しかれども。|一端(いつたん)
|発(おこ)ると。|愈(いゆ)るとの。|差別(しやべつ)有
により。|眼前(がんぜん)のしるしに|迷(まよ)ひ。
とりちがへて。|害(かい)を|招(まね)く。|人(ひと)|世(よ)
に|多(をゝ)し。所の人此|理(り)を|弁(わきま)へぬも有。
|或(あるひ)は中の湯を|称美(せうび)して。すゝむる
も有。病により。中の湯と。あら
ゆとを|分(わけ)て。|指図(さしづ)するもあり。|初(はじめ)
あらゆに入て。|悪物(あくもつ)を|追出(おいいだ)し。|後(のち)
中の湯に入て。いやすべしと云も
有。何れも|誤(あやまり)なり。かまひて〳〵。
随(したが)ふ事|勿(なか)れ。|瘡毒(さうどく)|発(はつ)して。た
へがたき事あらば。|暫(しばらく)湯を|休(やすみ)て
よし。|戯(たはふれ)にも中の湯に入べからず。
此|品(しな)を|不弁(わきまへず)して。|但馬(たじま)|湯治(たうぢ)とのみ
|心得(こゝろゑ)んは。大なるひがこと成べし