← 前のページ
ページ 1 / 3
次のページ →
翻刻
奥奉公(おくほうこう)出世(しゆつせ)双六(すごろく)
江戸人形町通り楽屋新道角
上州屋重蔵板
【最下段・右のコマから】
御めみえ 二おなかゐ 四おちゝ 六おはした
〽しほくみの御手
みせはモウおきゝ
あきなされたから
水くみがきゝ
たいとおほせ
られるマア
とんだ
おひめ
さまの
御このみだ
針妙(しんめう) 一おどり 三おいとま 六おぐしあげ
〽モウだんなさまが
おさがりだらう
ドレしごとをやめて, おちやを
わかさうか
万亭応賀作
ふりはじめ
一 おめみえ
二 おやとひ
三 お礼上り
四 おはした
五 しんめう
六 おすゑ
国貞改《割書:ニ|代》豊国画
御はした 三おすゑ 四おなかゐ 六おやとひ
〽此はるのやうにおきやく
さまがあつては
ろく〳〵御ぜんも
あがることは
できません
そのかはりには
いまにおやく
がへが
ごさり
ませう
御暇(をいとま) 一おめみえ 二しんめう 六おちゝ
〽はゝさんの
まへゝはどの
やうにも
いはふが
とゝさんに
きこへては
どの
やうな
めに
あは
されやうか
しれぬゆへ
これからおばさんの所へいつて
たのみませう
【下から二段目】
踊(をどり) 三お小しやう 四おめしつかひ 六おめみへ
〽マアこれで
ばんの
道具だても
そろつた
エヽト
そこで
ヲヽそれ〳〵
おつぼねさんの
ちやばんを
かんがへなけりや
ならなんだつけ
御代参(おだいさん) 一おつぎ 四ごふくの間 六《割書:ちごくが|すきで》おいとま
〽モウここはいいから
ともにゆくものを
いそいでしたく
させてくりや
よ□【□から□に繋がるという意味】
□
ちと
まはるところが
あるから
御中居(おなかゐ) 三お三の間 四おだいさん 六おもり
〽ヲヤまたけふも玉子やきに
おこんだてが
なほつた
ちやうど△
△
十日に
百丸【?】めし
あがつた マアいかな事でも
御末(おすゑ) 一おなかゐ 四しんめう 五おだいさん
〽コレごらん人形町の
上しうやの
くさぞうしは
いつでもおも
しろくてよくわかり
升よ
御雇(おやとひ) 一おもり 三おすゑ 五おどり
〽アレすヾがなり升よ
だれか
お出なさい
ませんか
わた
しが
いつ
たら
また
しから
れるで
あらう
御礼上り(おれいあが) 一おぐしあげ 二しんめう 三おさんのま
〽イエモウとうから【以前から】
ごきげんうかヾひに
あがりませうと
ぞんじ
まし
たれども
このやうな
わんぱくが
できまして
つい〳〵
ゑんにん【延引】
いたし
ました
【下から三段目】
部屋子(へやご) 一お三の間 二お茶の間 五おはした
〽なんでもおさがりのないうち
たんとあそんでおかぬといまに○
○琴を
さらへと
いはれ升
御祐筆(ごゆうひつ) 一おそば 二おどり 三表使
〽ちよつとでも
御返書を
おしたヽめ
あそば
せば
よいに
いつでも
おだいひつで
おきのどく さまな事だ
御髪上ケ(おぐしあげ) 二へや子 四おやとひ 五おこしやう
〽明日御下やしきの御かへりにはすみだ川の
土手を
おひろひ
あそばせ
どの
やうにか【「に」は、御三の間の本文2行目と同じ】
花
が
よ
ろ
しいと
おしたの
ものが
申
ま
し
た
呉服間(ごふくのま) 二ごゆうひつ 五おもてづかひ 六おすゑ
〽どうか
して
此おめし
ものをらい
ねんのおなんど
ばらひにいたヾき
たいものだが
そうむまくいけは
いヽが大かたらい
ねんもくだされ
ものは
ごゑんにん【延引】
たらう
御乳(おちヽ) 一おつぎ 五お礼上り 六ごふくの間
〽コレうばや■
うはやナゼ
だまつている
みはさつき
から
すこ
しも
ねずに
手まへの
もり
ばかり
して
ゐるぞ
御守(おもり) 三ごゆうひつ 五おちやのま 六おはした
〽アレ〳〵 わかさま
おとヽさまがおかヽ
さまのところへ
いらせられ
ました
から
は
やく
まいつて
ごきげんを
うかヾひ
ませう
【下から四段目】
御茶(おちや)の間(ま) 四ごふくの間 五おれい上り 六おやとひ
〽ヲヤ〳〵
おしたから
はゝが
あがり
ましたかへ
そんなら
明日の
当ばんと
くりかへて
くださいまし大かた
この間のゑんだんの事で
まゐりましたらう
御小姓(おこしやう) 二おめしつかひ 五おちやの間 六ごゆうひつ
〽ヲヤまた御前さまは
あのやうな
おじやうだん
ばつかり
おつ
しや
つて○
○おなぶりあそばす
表使(おもてづかひ) 一中老 二おちゝ 三へや子
〽どうもそのやうに
おものいりが
かさんでは
なりません
ごじせつ
がら
ゆへ
□
□おまへがたも
チトおきを
つけられたら
よからうに
御次(おつぎ) 一おそば 二表づかひ 六お礼上り
〽ヲヽあぶない〳〵
おまへはこず
とも
はやく
おそばに
おつき
もうしていな
いまぢきに
とつていく
からさ
御召仕(おめしつかひ) 一上り 五おそば 六おいとま
〽さくばんは奥へおとまりになつて
わたくしの身に
とつてはどの
やうに
うれ
しう
ござりませう
ヲヤもうちつと
ねをさげて
下方
ふうに
いつて
ください
御三(おさん)の間(ま) 一おつぎ 三おめみへ 五ごだいさん
〽サア〳〵こんどもつてきました
島にはぎょいに
いるのが
ござい
ます●
●
それはみんな
さげませう
【最上段】
中老(ちうらう) 一老女 四上り 六おへやさま
〽人のおちどをいふは
やすけれど奉公する
身はあひたがいどうがな
しておいとまに
ならぬ
やうに
とり
な
し
やうが
あり
さうな
もん
だぞ
御部屋様(おへやさま) 三御小姓 六上り
〽われ〳〵なぞの
いやしき身が
このやうに
出世するのも
みな天とうの
おめぐみ
これにつけても△
△おくさまはたいせつに
おもはねばならぬぞかし
上り
老女(らうぢよ) 一上り 三御次
〽ついにない
このはるは
おひめさまか
みな〳〵よく
つとめたに
よつて
御やく
がへの上
御ほうびを
くだされ
ますゆへ
ありがたく
御いたヾき
なされませ
御側(おそば) 一中老 六部や子
〽ヘイおひめさまお手ならひを
あそばせそのやうにおあそびに
お身がいつてはなりません
これはしたりまた
そのやうな
きた
ない
お
かほを
あそ
ばして
おむづかり
ますな
現代語訳
奥奉公出世双六
江戸人形町通り楽屋新道角
上州屋重蔵板
【最下段・右のコマから】
御目見得 二お中居 四お乳 六お端下
「塩汲みのお手伝いは、もうお聞きになったでしょうか。商いが済んだので、水汲みができるようになったと仰せられました。まあ、とんでもない。お姫様のお気に入りです」
針妙 一踊り 三お暇 六お櫛上げ
「もうご主人様がお下がりになるでしょう。どれ、仕事をやめて、お茶を沸かしましょうか」
万亭応賀作
振り始め
一 お目見得
二 お雇い
三 お礼上り
四 お端下
五 針妙
六 お末
国貞改二代豊国画
お端下 三お末 四お中居 六お雇い
「この春のようにお客様が多くては、ろくにお膳も上がることができません。その代わりには、今にお役替えがございましょう」
お暇 一お目見得 二針妙 六お乳
「母さんの前へはどのようにも言いましょうが、父さんに聞こえてはどのような目に遭わされるかわかりませんので、これからおばさんの所へ行って頼みましょう」
【下から二段目】
踊り 三お小姓 四お召使い 六お目見得
「まあ、これで晩の道具立ても揃いました。ええと、そこで、おお、それぞれ、お局さんの茶番を考えなければならなかったっけ」
御代参 一お次 四呉服の間 六(稚児が好きで)お暇
「もうここはいいから、供に行く者を急いで支度させてください。ちょっと回るところがあるから」
お中居 三お三の間 四御代参 六お守り
「おや、また今日も玉子焼きにお献立が直りました。ちょうど十日に百回食事を上がりました。まあどんなことでも」
お末 一お中居 四針妙 五御代参
「これご覧なさい。人形町の上州屋の草双紙はいつでも面白くてよくわかりますよ」
お雇い 一お守り 三お末 五踊り
「あれ、鈴が鳴りますよ。誰かお出になりませんか。私が行ったらまた叱られるでしょう」
お礼上り 一お櫛上げ 二針妙 三お三の間
「いえ、もうとうから(以前から)ご機嫌伺いに上がりましょうと存じましたけれども、このような我儘ができまして、つい延引いたしました」
【下から三段目】
部屋子 一お三の間 二お茶の間 五お端下
「なんでもお下がりのないうち、たくさん遊んでおかないと今に琴をさらえと言われます」
御祐筆 一お側 二踊り 三表使
「ちょっとでもお返書をお認めあそばせばよいのに、いつでもお代筆でお気の毒様なことだ」
お櫛上げ 二部屋子 四お雇い 五お小姓
「明日お下屋敷のお帰りには隅田川の土手をお散歩あそばせ、どのように花がよろしいとお下の者が申しました」
呉服の間 二御祐筆 五お表使い 六お末
「どうかしてこのお召し物を来年のお納戸払いにいただきたいものですが、そううまくいけばいいが、大方来年もくださるものはご延引でしょう」
お乳 一お次 五お礼上り 六呉服の間
「これ乳母や、乳母、なぜ黙っている。お方は先刻から少しも寝ずに、お前の守りばかりしているぞ」
お守り 三御祐筆 五お茶の間 六お端下
「あれあれ、若様、お父様がお母様のところへいらっしゃいましたから、早く参ってご機嫌を伺いましょう」
【下から四段目】
お茶の間 四呉服の間 五お礼上り 六お雇い
「おやおや、お下から母が上がりましたかえ。そうなら明日の当番と繰り返してください。大方この間の縁談のことで参りましたろう」
お小姓 二お召使い 五お茶の間 六御祐筆
「おや、また御前様はあのようなお冗談ばかりおっしゃってお戯れあそばす」
表使い 一中老 二お乳 三部屋子
「どうもそのようにお物入りがかさんではなりません。ご時節柄ですから、お前方もちょっとお気をつけられたらよろしいのに」
お次 一お側 二表使い 六お礼上り
「おお危ない危ない。お前はこずとも早くお側にお付き申していないと、今すぐに取って行くからさ」
お召使い 一上り 五お側 六お暇
「昨晩は奥へお泊りになって、私の身にとってはどのように嬉しゅうございましょう。おや、もう少し音を下げて下方風に言ってください」
お三の間 一お次 三お目見得 五御代参
「さあさあ、今度持ってきました島には魚に似るのがございます。それはみんな下げましょう」
【最上段】
中老 一老女 四上り 六お部屋様
「人の落ち度を言うは易いけれど、奉公する身は相互同士助け合ってお暇にならぬようにとりなす方法がありそうなものだぞ」
お部屋様 三御小姓 六上り
「われわれなどの卑しき身がこのように出世するのも皆天道のお恵み、これにつけてもお奥様は大切に思わねばならぬぞかし」
上り
老女 一上り 三お次
「ついに、この春はお姫様が皆々よく勤めたによって、お役替えの上、お褒美をくださいますので、ありがたくお頂戴なされませ」
お側 一中老 六部屋子
「はい、お姫様、お手習いをあそばせ。そのようにお遊びにお身が行ってはなりません。これはしたり、またそのような汚いお顔をあそばして、おむずかりますね」
英語訳
Palace Service Career Sugoroku (Board Game)
Edo Ningyocho Street, Gakuya Shindo Corner
Published by Joshūya Jūzō
[From the bottom right square:]
Omemie (First Audience) - Move to: 2 Onakawi, 4 Ochichi, 6 Ohashita
"Have you heard about helping with salt drawing? Since the business is finished, I was told that water drawing is now possible. My, how unexpected! It's the princess's favorite."
Shinmyō (Needlework) - Move to: 1 Odori, 3 Oitoma, 6 Ogushiage
"The master will probably come down now. Well, let's stop work and prepare some tea."
Created by Bantei Ōga
Starting positions:
1. Omemie (First Audience)
2. Oyatoi (Employment)
3. Oreiagari (Ceremonial Visit)
4. Ohashita (Lower Maid)
5. Shinmyō (Needlework)
6. Osue (Lowest Rank)
Illustrated by Kunisada, later called Second Generation Toyokuni
Ohashita (Lower Maid) - Move to: 3 Osue, 4 Onakawi, 6 Oyatoi
"With so many guests this spring, we can barely manage to serve meals properly. In exchange, there will surely be position changes soon."
Oitoma (Leave/Dismissal) - Move to: 1 Omemie, 2 Shinmyō, 6 Ochichi
"I can say anything to mother, but if father hears about it, who knows what kind of trouble I'll face. So let's go to aunt's place and ask for help."
[Second row from bottom:]
Odori (Dancing) - Move to: 3 Okoshō, 4 Omeshitsukai, 6 Omemie
"Well, now all the evening's props are ready. Let's see, so we need to think about the lady-in-waiting's tea ceremony performance."
Odaisan (Proxy Worship) - Move to: 1 Otsugi, 4 Gofuku no Ma, 6 (Fond of children) Oitoma
"This is fine now, so please hurry and prepare the attendants. There are some places to visit along the way."
Onakawi (Middle-ranking Maid) - Move to: 3 Osan no Ma, 4 Odaisan, 6 Omori
"Oh my, today's menu has been changed to egg rolls again. We've had exactly one hundred meals in ten days. Well, whatever happens."
Osue (Lowest Rank) - Move to: 1 Onakawi, 4 Shinmyō, 5 Odaisan
"Look at this. The illustrated books from Joshūya in Ningyocho are always interesting and easy to understand."
Oyatoi (Employment) - Move to: 1 Omori, 3 Osue, 5 Odori
"Oh, the bell is ringing. Won't someone please go? If I go, I'll probably get scolded again."
Oreiagari (Ceremonial Visit) - Move to: 1 Ogushiage, 2 Shinmyō, 3 Osan no Ma
"Well, I've been thinking of coming to pay my respects for a long time, but I've been acting so selfishly that I kept postponing it."
[Third row from bottom continues with similar format...]
[Top row:]
Chūrō (Middle-aged Lady-in-waiting) - Move to: 1 Rōjo, 4 Agari, 6 Oheyasama
"It's easy to point out others' faults, but those in service should help each other to avoid dismissal."
Oheyasama (Lady of the Chamber) - Move to: 3 Okoshō, 6 Agari
"That we humble people can achieve such success is all due to heaven's blessing. We must treasure our mistress all the more."
Agari (Success/Goal)
Rōjo (Elderly Lady-in-waiting) - Move to: 1 Agari, 3 Otsugi
"Finally, this spring the princess has served well, so you will receive rewards along with position changes. Please accept them gratefully."
Osoba (Personal Attendant) - Move to: 1 Chūrō, 6 Heyago
"Yes, princess, please practice your calligraphy. You must not go off playing like that. Oh dear, and with such a dirty face - you'll make everyone worry."