翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物和本草 : 3巻 - 翻刻

化物和本草 : 3巻 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

獅子身中蟲(しゝしんぢうのむし) 《割書:加古川本草(かこがわほんざう)|/綱目(かうもく)に曰(いはく)》 しゝしんぢうのむしといふはかしらはつりどうろうのことく はねはくものすのごとくしりおはふみのごとし つねにゑんの下にすまいをなしたこざかなを ゑじきとなしそのこゑ ゆらどの〳〵となくあるひと かんざしをしゆりけんにうつて このむしをころしかも川【加茂川=鴨川】へ ながしたるとなりもつとも あかいわし【赤鰯=錆びた刀】をきらふむしなり いつたいこのむしは そのいゑにしやうじ そのいゑのろくを はんでそのいゑを ほろぼさんと はかるいたつて ふぎふぜんを このむなり にくむべく おそるべきむしなり 忠臣蔵 七段目に つまびらかなり いまここに りやくす【略す】 【右ページ下】 〽ゆふべのゆめみが わるかつた にげろ 〳〵 【右ページ中ほど】 〽あのやつこ【奴】はしやうぶかはの きものをきているから てらおか平右ゑ門【注】かと おもつてひつくりした 【左ページ】 のふこはや おそろしや 【注: 文中に見える「仮名手本忠臣蔵/七段目」に由来。赤穂藩に仕えていた足軽で、一力茶屋の遊女・お軽(おかる)の兄。獅子身中の虫は斧九太夫 (おの くだゆう)を指す】

現代語訳

獅子身中の虫(ししはんちゅうのむし)《加古川本草・綱目に記載あり》 獅子身中の虫というのは、頭は釣灯籠のようで、羽は蜘蛛の巣のようで、尻尾は扇のような形をしている。いつも縁の下に住処を作り、蛸や小魚を餌としている。その鳴き声は「ユラドノドノ」と鳴く。ある人が簪を手裏剣にして、この虫を殺して鴨川へ流したという。この虫は錆びた刀を最も嫌う虫である。そもそもこの虫は、その家に生じて、その家の利益を半減させ、その家を滅ぼそうと企む、極めて不義不善を好む虫である。憎むべき、恐るべき虫である。 『仮名手本忠臣蔵』七段目に詳しく描かれているが、ここでは省略する。 【右ページ下の歌】 ♪夕べの夢見が悪かった 逃げろ逃げろ 【右ページ中ほどの歌】 ♪あの男は菖蒲革の着物を着ているから、寺岡平右衛門かと思ってびっくりした 【左ページ】 ああ恐ろしい、本当に恐ろしい

英語訳

The Parasite Within (Shishi Shinchū no Mushi) 《According to Kagogawa Honzō and Kōmoku》 The "parasite within" has a head like a hanging lantern, wings like a spider's web, and a tail shaped like a fan. It always makes its dwelling under the veranda and feeds on octopus and small fish. Its cry sounds like "yuradono-dono." Someone is said to have used a hairpin as a shuriken to kill this creature and threw it into the Kamo River. This insect particularly dislikes rusty swords. Essentially, this creature manifests in a household, reduces that household's fortune by half, and plots to destroy the family. It is a creature that extremely favors injustice and evil. It is a detestable and fearsome insect. This is described in detail in Act VII of "Kanadehon Chūshingura," but I will omit it here. 【Song from lower right page】 ♪Last night's dream was terrible Run away, run away 【Song from middle right page】 ♪That fellow is wearing iris leather clothing, so I was startled thinking it was Teraoka Heiemon 【Left page】 Oh how frightening, truly terrifying