翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物太平記 3巻 - 翻刻

化物太平記 3巻 - ページ 10

ページ: 10

翻刻

こゝにおはりのくに【尾張国】 きよす【清須】のほとりに むけんのかね【無間の鐘】をつきたる ものをせめさいなむ なめくじりのおかし らあり しやう とく こゝろ くわつたつ【闊達】 にていふう【威風】 をこのみ いせいつよく りんごく きんごく をきり したがへ くにの でぐち 〳〵に せきしよ をか まへ わう らいの そうを【往来の僧を】 とらへて ごくやに【獄屋に】 つなぎおき 父祖の仏事にあたるとき これをゆるして 【左ページへ】 せん ぞう【千僧】 くやうを なし  たり   ける 〽ヤア  おのれら にげるとて にがそふか とても かなはぬ よし  わらの【吉原の】 大もん   で【大門で】 しん そつこに【新造っ子】 とつつか まへら れたと おなじ   こと サア〳〵 ちよいと きなさい    〳〵 ちり〳〵    〳〵      だ 【左ページ下】 〽あれさ わるく ふざけな さるいつそ じれつ てへぞ よウ 〽モシ〳〵 わたくしは びろう【尾籠】ながら はらくで【腹下しで?】ごさり ますからちよつと せつちんへいつてまいりませう   

現代語訳

ここに尾張国清須のあたりに、無間の鐘を撞いた者を責め苛む、なめくじの親分がいた。性格は闊達で威風を好み、勢いが強く、隣国・近国を切り従え、国の出口出口に関所を構え、往来の僧を捕らえて牢屋に繋いでおき、先祖の仏事にあたるときにこれを許して千僧供養を行っていた。 「やあ、おのれら逃げるといって逃がそうか。とても敵わないぞ。吉原の大門で新造っ子に捕まったのと同じことだ。さあさあ、ちょいと来なさい、ちりちりちりだ」 「あれさ、悪くふざけなさるな。いっそう腹立たしいぞよう」 「もしもし、私は下品ながら腹を下していますから、ちょっと便所へ行ってまいりましょう」

英語訳

Here in the vicinity of Kiyosu in Owari Province, there was a slug boss who tormented those who had struck the Bell of Avīci Hell. His character was bold and he favored imposing authority. With great power, he subjugated neighboring provinces and nearby territories, set up checkpoints at every exit from his domain, captured passing monks and chained them in prison. When it came time for ancestral Buddhist services, he would release them to perform thousand-monk memorial services. "Hey, you think you can escape by running away? You don't stand a chance! It's just like being caught by a shinzō apprentice at Yoshiwara's Great Gate. Come now, come here right away - chiri chiri chiri!" "Hey now, don't fool around badly like that. It's all the more irritating!" "Excuse me, though it's vulgar to mention, I have diarrhea, so I'll just go to the toilet for a moment."