翻刻
かのへびは
なめくじりの
いせいつよく
きんこくに
てきたいある
ものなき
よしを
きゝて
なにとぞ
このなめ
くしり
かたへ
ほう
こう
せんと
おもひ
なめくじ
りがこまき
やまみかりの【御狩の?】
ぢんちうへ
すいさんし
ほうこう
のそみのよし
申たてけれは
手下のばけ
ものども
大ぜい
さはぎ
たちて
へびを
とり
まき
もしや
【左ページへ】
てき
がたの
まはし
もの
にては
なき
かと
みな
〳〵
へびを
めし
とら
んと
いふ
へび
だん
〴〵
の
もの
がたり
して
みのうへ
をつゝま
ずはなし
ひたすら
たのみて
ついにあしがる
がしらにあ
づけられ
しもべの
ほうこうを
いたし
ける
【右ページ下、台詞】
〽こいつほうこうを
したいとは
ふと
じるしな
やつだうぬが
よふなぬらくら
ものをたれが
かゝへるもん
だ
おしの
つゑゝ
〽ほんのめくら
へびに
おちず
とはお
のれが
ことた
さがれ
〳〵
【左ページ下、台詞】
〽おのれいぢ
ばると
かばやきに
してちや
づるが【茶漬る=茶漬け】
どふだ
〽これさあにきたち
そんなにつれなく
するにもあたる
めへしよじ
きこうがたを
たのみのすじだ
現代語訳
かの蛇は、なめくじりの威勢が強く、近国に敵対するものがないという様子を聞いて、何とかこのなめくじりの元へ奉公しようと思った。なめくじりが駒木山で御狩の陣中へ推参し、奉公の望みの旨を申し立てたところ、手下の化け物どもが大勢騒ぎ立てて蛇を取り囲み、「もしや敵方の回し者ではないか」とみんなで蛇を召し捕らえようとした。蛇はだんだんと物語をして身の上を包まず話し、ひたすら頼んで、ついに足軽頭に預けられ、下僕の奉公をすることになった。
「こいつ奉公をしたいとは太い了見な奴だ。うぬがような濡くら者を誰が抱えるものだ。押しのつええ」
「本当の盲蛇に劣らずとはお前のことだ。下がれ下がれ」
「お前をいじって蒲焼きにして茶漬けにしてやるがどうだ」
「これさあ兄貴たち、そんなにつれなくするにも当たるまい。俺は正直公方を頼みの筋だ」
英語訳
That snake, hearing that the slug monster was mighty and had no enemies in the neighboring provinces, thought to somehow enter service under this slug monster. When the slug was at his hunting camp at Komaki Mountain, the snake came forward and petitioned to serve him. The many monster subordinates raised a commotion and surrounded the snake, with everyone trying to capture it, saying "Could this be a spy from the enemy side?" The snake gradually told his story, speaking openly about his circumstances without concealment, and earnestly pleaded his case. Eventually he was entrusted to an ashigaru captain and began service as a lowly servant.
"This fellow wanting to serve - what a bold notion! Who would employ a slippery character like you? How pushy!"
"You're no better than a truly blind snake - that describes you perfectly! Get back, get back!"
"How about I mess with you and make you into grilled eel over rice?"
"Now listen here, brothers, there's no need to be so cold to me. I'm an honest fellow seeking a patron to serve."