翻刻
むめはけしきはみ【注①】ほゝゑみわたれるとり
わきて見ゆはしかくし【注②】のもとのこう
はひ【紅梅】いととくさくはなにていろつき
にけり
くれなゐ に(の)【左に「ヒ」と傍記】はなそあやなく【注③】うとまるゝ
むめのたちえ【立枝】はなつかしけれといてや【注④】と
あいなく【注⑤】うちうめかれ【注⑥】給かゝる人〳〵のす
ゑ〳〵いかなりけん
【注① つぼみがふくらむ。】
【注② 寝殿などの正面の階段を覆うために差しだした屋根。】
【注③ 理由なく】
【注④ いやもう。なんとまあ。】
【注⑤ むしょうに】
【注⑥ 溜息をつき】
現代語訳
梅はつぼみがふくらんで、ほほ笑みかけるように咲いている。とりわけ美しく見えるのは、階段の屋根の下の紅梅で、とても早く咲いて美しい色づきになった。
紅の花ばかりが理由なく疎まれるが
梅の立枝は親しみやすいものだ
と「いやもう」とむしょうに溜息をつかれる。このような人々の末路はどうなったのだろうか。
英語訳
The plum blossoms were budding, smiling as they bloomed across the branches. Particularly beautiful was the red plum beneath the stairway roof, which had bloomed very early with exquisite coloring.
Only the crimson flowers are shunned without reason,
Yet the plum's upright branches are so dear and familiar.
"Oh my," he sighed deeply and uncontrollably. What became of such people in the end?