翻刻
ばけもの
なかまもきん
ねんはあ
まりお
ちをとつ
たことも
なくきん
ときでやい
にへこみどう
しにてその
うへこのごろは
ばけものなかまの
こむすこやこむすめが
【左中】
まよいごになつて
ゆきがたしれざる
ものかずをしらず
ばけものでやいの
事なれば
よもや
きつね
たぬきに
ばかされた
でもあるまい
かみさそい
ならばてんぐ
たちのかたに【天狗たちの方に】
いるはづそう
でもなし
なんでも
ふしぎな事たと
ひやうぎ【評議?】まち〳〵
にてすてゝもおかれ
ずといゝやわせて
たづねにでる
【左上】
人のまよいごは
のやまをたづね
ばけものでやいの
まよいごハとかく
まちなかを
さがしあるく
かねたいこ
よりふへと
たいこでヒヤウ
ドロ〳〵
まいごの〳〵
ろくろくびヤイ
ヒヤウドロ〳〵〳〵
【右ページ下】
りやう
ごくあた
りを
たづね
たら
しれ
そふな
ことだ
〽まいこの〳〵
ろくろくび
ヤアイ
チヨン〳〵
チキ〳〵
チヨン
チキ
チ
みぶおどり
どころ
じやアねへ
しやれやんな【洒落やるな ふざけるな?】
【左ページ下】
ろくろくびどのは
めんかはまぶし【めんか=顔のことを指す隠語】【面皮まぶし 美人だ?】
大かたしりくらい【片尻食らい=自分の都合の良いことしか覚えない事】
くはんのう【乃う 尻暗い観音?】にでも
あやなされねば
いゝが
【この本は『化物尽』のコマ14より後ろと内容が同じです。→ https://honkoku.org/app/#/transcription/58C13F3372376C30ECFA766E7A6C1DDE/14/】
現代語訳
化け物の仲間も近年はあまり落ち着いたこともなく、近頃で家内にへこみ同士にて、その上この頃は化け物仲間の子息や子女が迷子になって行方知れざるもの数知れず。化け物大家の事なれば、まさか狐や狸に化かされたでもあるまい。神隠しならば天狗たちの方にいるはずそうでもなし。なんでも不思議な事だと評議まちまちにて捨てても置かれずと言い合わせて探しに出る。
人の迷子は野山を探ね、化け物大家の迷子はとかく町中を探し歩く。鐘太鼓より笛と太鼓でヒョウドロドロ、「迷子のろくろ首やーい」ヒョウドロドロ。
両国辺りを探ねたら知れそうなことだ。
♪迷子のろくろ首やーい、チョンチョン、チキチキ、チョン、チキ、チ
「壬生踊りどころじゃあねえ、洒落やるな(ふざけるな)」
「ろくろ首殿は顔がまぶしい(美人だ)。大方尻暗い観音にでもたぶらかされねばいいが」