翻刻
【右側】
うきねするゑしまかいその波の上にうつしてそみるほし合の空
旅宿七夕をよめる 藤原季経朝臣
たなはたにくさの枕をかしつれはわかれぬさきも露深からん
雨中七夕をよめる 定珍法師
ふる雨にぬれやしぬらん七夕のけふ斗こそか《見せ消ち:は|わ【朱】》くたもとを
七夕の暁のおもひをよめる 賀茂重保
きのふまておもひくらしてたなはたのもとのなけきに又かへるらん
《見せ消ち:閑|閏》七月七日よめる 藤原有定
とし毎のけふにならひて天川わたしやすらむかさゝきのはし
槿花をよめる 大江公景
風ふけはかゝるまかきもたちろきていとゝあたなる朝かほの花
大江家尚
【欄外上部】
堀川
朝夕につたふいたゝの橋
なれはけたさへたえて
たしろきにけり
浜臣云たしろきの仮字なるへし
身しろくなと同ししろくといふは
動の字の義なりたはたやすきなと
云たと同しく上に添し辞にていと軽し
【左側】
朝かほの花にやとかるしら露ははかなきことをいひやあはする
田家暮風といふことをよめる 藤原能盛
夕まくれやとのかとたにおとす也これやみにしむ秋のはつかせ
藤原資隆朝臣
とふ人もなきわか宿の夕まくれたれにこたふる荻のはかせそ
草花秋をつくといふこゝろをよめる
法印静賢
千【朱】
秋きぬと風もつけてし山里になをほのめかす花すゝき哉
庭《振り仮名: |花歟【朱】》纔開綻秋といふことを 智経法師
我宿にけふさきそむる女郎花秋をしらするつまにさりける
草花纔開といへることを 大納言実房
【欄外上部】
万葉 万志呂久【朱】
金葉秋 源雅兼朝臣
咲そめしあしたの原の
女郎花秋をしらする
つまにそありける