翻刻
【右側上段】
ん、何れも県庁に集合(しうがふ)し、全力を此処に尽(つく)したるも其甲斐(そのかひ)なき
のみか、此れか為め他の火の手は縦横無尽に延焼(えんせう)したり。
▲第二火の手の行先 県庁を焼払(やきはら)ひたる火の手は、山王町の一
部を焼き、二番町に出て、東本願寺別院市役所中学校に移り、
総曲輪大通りの一側を無きものにし、越川楼より旧城内に飛
び、千歳館へと延焼したり。
▲第三の火の手 第二の火手にて払はれたる後、第三の火の手
は来れり。此の手に警察官及ひ消防組か県庁のみに固着せし間
に、中野新町より星井町、田町に侵入(しんにふ)し、其勢ひ漸次に左方に
拡(ひろ)かり、千石町の一部をかすめて、山王町より覚中町に入りた
り。此時総曲輪、旅籠町附近は消防の準備整ひ、第二の火の手
には郵便局側を救(すく)ひたるも、第三手は覚中町より西四十物町に
入(い)り、第二の火の手と合し郵便局に移り、病院に移(うつ)り、終に師
範学校に及(およ)びたり。
▲右手の火勢 是より先き中野新町の火元は、消防なしに放棄(はうき)
せられしかば、此に一手を作(つく)り、古鍛冶町付近を撃破して、中
教院前に出で、同院の向側一|帯(たい)を無(な)きものにして、大橋に及(およ)ひ
たり。
▲飛火 市の東北東地方地内精米会社を全焼し、更に神通川を
渡りて、市の西北婦負郡牛島村に飛ひ六戸を焼失したり。
▲鎮火 延焼は午後二時頃迄にて止みしも、午後五時頃迄は全
く鎮火(ちんくわ)せざりき。
▲各地より見たる大火 高岡|附近(ふきん)より見たる人の話によれば、
本市の火事にあらず、岩瀬附近なるべしとの事なりき。金沢市
にては、多く城端附近なるべしと見込(みこ)みたる由。中にも犀川々
口にては、金沢市内と誤認(ごにん)し、三点鐘をなしたりといふ、以て
其の劇烈なりし一斑を知るべし。
【右側下段】
●延焼町村名
中野新町、豊川町、八人町、覚中町、千石町の内、蛯町、今町、中野
町、室屋町の内、山王町の内、仁右衛門町、立町、新川原町、中町
、下川原町、殿町、砂町、下木町、東四十物町、今木町、常盤町、総
曲輪の内、西堤町、小島町、袋町、石倉町の内、西三番町、北横町、
東堤町、星井町の内、古鍛冶町、一番町、衣服町、東三番町、南新
町の内、二番町、五番町の内、西町、南田町、越前町の内、梅沢町
の内、大工町の内、桜木町、鍛冶町、木町、荒町、太田口町、牛島村
全田地方村各一部
●重要なる罹災建物
今回の火災(くわさい)は同市に於ける首要地を焼き尽したるものなれば、
建物(たてもの)も重(おも)なるもの多かりし。
◎官衙 県庁、警察本部、警察署、上新川郡役所、市役所、郵便
電信局、税務署、師範学校、第一中学校、商業学校、高等小学校、
啓廸校女子部、尋常小学三ケ所
◎新聞社 北陸政論社、富山実業新聞社、越中新報社
◎活版所 いろは、城村、高見
◎病院 市立、山田
◎寺院 東西本願寺別院其の他六ケ寺
◎神社 日枝神社
◎銀行会社 十二銀行、四十七銀行、倉庫銀行、取引所、商業会
議所、羽二重組合、永井機業場、富山貯蓄銀行、密田銀行、魚市
会社、通運会社、農工銀行、北陸生命保険会社
◎其の他のもの 共進会建物、旧議事堂、千歳館、広貫堂、師天
堂、仁寿堂
●類焼家屋敷
類焼したる各町の家屋概数は左の如し。
【左側】
【上下二段に図あり、右から左へ横書き】
【上段】
旧富山城趾及共進会場焼失地の図
【下段】
富山市惣曲輪付近の図