翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

艱難目異志. 上,下 - 翻刻

艱難目異志. 上,下 - ページ 6

ページ: 6

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【右丁】 家居(いえゐ)つき〴〵しく【「つぎつぎし(次次し)=次から次へと」だと文意があわない。「つきづきし(付き付きし)」=ふさわしい・調和がとれている。」の方が文意に叶っていると思われるので、筆者が濁点の位置を、繰り返し記号の所と間違えて付けたものと思われる。】つくりみがゝれしかた〴〵 堂舎(だうしや)【大小の家々】仏(ぶつ)かく【仏閣】社頭(しやとう)にいたるまてあるひは棟木(むなぎ) くじけ【折れたり曲がったりする。】梁(うつばり)【家屋や橋などの骨組みの一つ。柱と柱の上に渡し、棟の重みを支えるもの。】ぬけて瓦(かはら)おち垂木(たるき)【屋根面を形成するために棟から桁へ渡す長い木材。】おれ【折れ】さしもの【「指物」=家具や器具】 砕(くだけ)て軒(のき)かたふきあるひは鴫居(しきゐ)【本来は「敷居」とあるところ。「筆者は「敷」を「鴫」と書き誤ったか、次の「鴨居」の「鴨」に対して同じ鳥の名の「鴫」の字を用いてシャレたのかも。】鴨居(かもゐ)はゆがみ すじり【「捩じり」=ねじれ】さしこめたる【中に閉じ込めている】戸障子(としやうじ)どもをひらかん とするにつまりてあかずこれに心をとられ て気(き)をうしなひ又はにげんとするに地かたふ き【傾き】足(あし)よろめきてうちたをれふしまろぶ【臥し転ぶ=身を投げ出してあちこちにころぶ。】 かたはらには家くづれておちかゝるさしもの なげし鴨居(かもゐ)にかうべを打わられたをるゝ 小壁(こかべ)【戸窓の上下にある壁。】に腰(こし)のほねをうちをられ二 階(かい)より高□【「い」か?】 【左丁】 ものはおちかゝる棟木(むなぎ)に髪(かみ)のもとゞり【髪を頭の上に集めてたばねたところ】をはさ まれたもと【袂】をはさみとめられみづからかたな わきざしにて切(きり)はなちにげおりてはう〳〵 いのちをたすかり又は大 木(ぼく)にうちひしかれ てひらめ【「平め・平目」?】になりて死(し)するもあり疵(きず)をかうふり【「こうぶり」=被り、蒙り】 て吟(によひ)【「によび」=うんうんうなる。うめく。】ふし【伏し或は臥し】今をかぎりのものもありをよそ 京中のさうどう【騒動】前代未聞(ぜんだいみもん)の事共なり ある人これにおどろきて腰(こし)【偏のにくづきがのぎ偏になっているのは誤り】をぬかして尻井(しりゐ)【「尻居」とあるところ。…尻もち】に どうど【でんと】ふしてかくぞよみける   ふる【振る】なえ【「なゐ」とあるところ。土地、地盤の意。「なゐふり」で「地震」の意。後に「なゐ」だけで地震をいうようになった。ここでは後に出る語の関係で「なえ」といっているのであろう。】にあやかりけり【地震と同じように動揺していた】な手も足も    なえになえ【「なゐに萎え」と「萎えに萎え(萎えを強調)」を掛けている。】つゝたゝれこそせね【立つことさえ出来ない】

現代語訳

【右丁】 家屋が調和よく美しく作り磨かれた方々や、 堂舎(大小の家々)、仏閣、神社に至るまで、あるものは棟木が 折れ、梁が抜けて瓦が落ち、垂木が折れ、家具が 砕けて軒が傾き、あるいは敷居や鴨居が歪み 捻じれて、閉じ込められた戸や障子どもを開こう とするが詰まって開かず、これに気を取られて 気を失い、また逃げようとするが地面が傾き 足がよろめいて倒れ伏し転ぶ。 傍らには家が崩れて落ちかかる。家具や 長押、鴨居に頭を打たれて倒れる。 小壁に腰の骨を打ち折られ、二階から高い 【左丁】 物は落ちかかる。棟木に髪の元結を挟 まれ、袂を挟み止められ、自ら刀や 脇差で切り離して逃げ降りて、やっと 命を助かり、また大木に打ち潰され て平たくなって死ぬ者もあり、傷を負って うめき伏し、今を限りの者もあり。およそ 京中の騒動は前代未聞の事どもである。 ある人がこれに驚いて腰を抜かして尻もちを どんとついて、このように詠んだ。   地震にあやかって手も足も    萎えに萎えて立つことさえできない

英語訳

【Right page】 Houses that had been harmoniously and beautifully constructed and polished by various people, hall buildings (houses large and small), Buddhist temples, and shrine grounds—some had their ridgepoles broken, beams pulled out with roof tiles falling, rafters snapped, furniture smashed and eaves tilted, or door sills and lintels warped and twisted. When people tried to open the doors and sliding screens that were stuck shut, they were jammed and wouldn't open. Distracted by this, some lost consciousness, and others trying to flee found the ground tilted, their legs stumbled and they fell down and rolled about. Nearby, houses collapsed and fell down. Furniture, horizontal beams, and lintels struck people's heads, knocking them down. Lower walls broke people's hip bones, and from the second floors, tall 【Left page】 objects came falling down. Hair knots were caught in ridgepoles, sleeves were pinned down, and people cut themselves free with their own swords and short swords to escape and flee, barely saving their lives. Others were crushed flat by large trees and died, some suffered injuries and lay moaning, at death's door. In general, the commotion throughout Kyoto was unprecedented. One person, shocked by this, lost control of his legs and sat down hard on his bottom with a thud, and composed this poem:   Taking after the earthquake, both hands and feet    Are so weakened that I cannot even stand