翻刻
去程に津田方には禁長早速押寄
来るべしと用意して相待けれども
何か沙汰もなかりしゆへ今は心あしと
用心も怠(おこ)たり昼夜酒宴をなして
居ける所へ物見(ものみの)の狸あわたゝしく走り
来り只今日開野禁長が勢と相見
へ二三百 計(ばかり)りの勢(せい)にて津田川を静
に渡り此所へ押寄来り旨早〳〵御用
意あつて然るべしと息継(いきつぎ)あへず
注進しければ皆〳〵大ひに驚きあわて
ふせぎの用意を致しける時に川島九左衛門
あさ笑ひ禁長 己(おの)れの武勇にほこり纔(わづか)
の小勢を以て押寄来る事片腹致し某
馳向(はせむこ)ふて蹴殺(けころ)すべし作右衛門八兵衛か弐尺【疋ヵ】は
本陣を守(まも)り■【給?】へと言捨 屈竟(くつけう)の狸四五
百引連て一さんに川嶋へかけ行向ふを
きつと見るに其勢弐百計かり大石小石
を拾(ひろ)ひ真一文字に津田山へ押寄たり