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翻刻
女三の宮はしゅしゃくゐんの
御娘也かしは木の衛門ほのかに
なれそめまいらせてのち
かのみやにねこの有けるを
見てかしは木の
歌に
こひ
わた【「ふ」とあるところ】る人の
かたみと手ならせはなれよ
なにとて
なくねなるらん
現代語訳
女三の宮は朱雀院の御娘である。柏木の衛門督がひそかにお慕い申し上げるようになった後、その宮に猫がいるのを見て、柏木が歌を詠んだ。
恋しく思う人の形見として手に馴らしているのなら、なぜ離れてしまうのか。どうしてこのように鳴く声になるのだろうか。
英語訳
The Third Princess was the daughter of the Suzaku Retired Emperor. After Kashiwagi, the Lieutenant General of the Right, had secretly begun to court her, he saw a cat that belonged to the princess and composed this poem:
If you are meant to be cherished as a keepsake of the one I love, why do you flee from me? Why do you cry with such a voice?