翻刻
惣而あかつま川ハ山間を流出し川にして双方岸
高ク拾丈弐拾丈其餘も有し所多かりき然るを川
端の村々泥押家蔵田畑押うつみ村にゟて川へ
四五町も隔りし村も泥いりしも有大笹邊ニ而ハ
百弐三拾間も有し□火石押出し其外三四拾間も
有し石ハ限りなし其比ハ火燃出けると也川原畑
辺まても十間位の石ハ多ク押し来り川の中にて
火もへなから流れけれハ水ハ煮湯のことくにて
五七日の内ハ泥にへかへり前代未聞のありさまなり
坪井村助右衛門とて吾妻一の富家也四五千石も
領しける程の住居にて川ゟ三四丁も高き所に家
ありけるを泥ニて埋みける也家内の人ハ能はやく
逃しゆへ男女ともにあやまちなし然れ共財宝金
銀ハ皆泥の内へうつミし也牧の御番所さてまさ
福嶋五料の御関所も小野子渋川中村邊泥
押入三度ハ丁川岸迠も川筋ハミな荒地となり
利根川ゟ小山川へ泥押入所により川をうつめ
田畑を押流し瀬となりしも多し川々大石大木
え泥押懸ふさきしゆへ上の方へなかれ其水脇々へ
開き田畑を悉押ける所多し山へ行畑へ出し
人はかりからうして逃れ助り少むまりしへ
も火石流かゝり火事となり焼失しける