翻刻
かへらす其後盗賊のはかり事にや又々泥おし来る也逃た
まへと大聲に罵りけれバ人々先にこりたる侭誠なりと思ひ
足を空にして山へ逃行ける其跡にて家蔵へ入財宝を
ぬすミとりしとや其砌諸々富家の人ハ思ひ〳〵に米金ヲ
施行いたしける也大戸村安左衛門ハ近在迄壱けん金壱分つゝ
賦ると也川向へハ矢文を射向ふに居當りし吉右衛門へ告郷原ゟ
上の山本迄壱軒壱分宛遣ス川原湯の孫左衛門是ハ米を
出しける一説に澁川ゟ大戸迄流残りし人難義なりしを
扶持しけると也よりて 御公儀より御褒美被下置と也
小与 小宿 芦小田 袋倉 此四ケ村ニ而流残りし人
九拾三人有り大笹村ニ小屋をしつらひ所の名主長左衛門
星又彦五郎是も大戸に劣らぬ富家也馬を三十疋持し也
神原村黒岩九左衛門右三人ニ而扶持しける其後彼九拾三人
男女としに應しめあハセ流残りし畑をつくらせける
となり是を大笹一夜の婚礼といへりと也右の三人のもの
御公儀より奇|特(トク)なるはからひ也と御ほめ被成銀拾枚つゝ御褒
美被下苗字御免也長野原人馬大方死是ハ逃場なき故也
うしろハ岩山にして登る事かたし前ハ泥押来り下モへ
逃んとしけれハ小川有りて泥押入わたる事難し羽尾村
是も同しく下もを大石大木ニ而セき留 村をかミの方へ流し
ゆへ不残押埋 田中と云里ニ而ハ泥押しきたりしを大風土を
吹立けると心得家々にて戸をさし居たりしゆへのこりなく押