翻刻
一黒江町蛤町総て一口此火元熊井町家主利八大島町
同幸次郎黒江町同善兵衛蛤町同伊右衛門右四人也
一 同所永代寺門前仲町同門前町同東仲町同山本町
一口此火元永代寺門前町家主竹次郎同町与兵衛
同所東仲町同金次郎同所山本町同金平右
四人也
市中出火通計合三千口也こはすへて市中のみの
分限にて其中変死人なとは武家方社家寺院を
籠めていくはくの人数かあらん取集めなは必
一万人にあまるなるへし玉川上水樋筋地いたく
さけ破れしかば大木戸より麹町十二丁目横町角迄
右樋仮御普請に依て今日より往還の間普請場所
おくり〳〵に往来人をとゞめらる九日天曇る今日
堀田備中守殿《割書:従四位侍従溜之間詰領|下総国佐倉十壱万石》御老中上座仰付らる
《割書:再勤|なり》夕つかた紅樹園朗一訪ひ来る此老人なゐぶり
の夜牛込逢坂の上駒木根氏氷骨がもとに
在りしが家ゆり傍らの崖崩れしかど辛うじて
老人も氷骨も死をまぬかれしよしを物語る
【上段】
今度の変死人
数届三万人余
或は五万人余とも
聞え至て甚しきは
廿二万余人など
いつれも物に記し
聞ゆれと皆浮説にて
取へからずされどかゝる
事も後世に及べは
却て浮説の莫
太なるかたを事
実とする例少
からず既に予か
こゝに一万にあまる
べきよしを書付
しは誠に動く
ましき数量也
そは市中総計
三千八百九十五人え
武家寺社を二
倍に加へても一万
二千人ばかり也其
中市中の死人の
洩たるも多けれは
これかれ融通して
其数量全く凡
一万五千人にはたら
さるへしこは浮世の
惑ひを解ん為に
記すのみ