翻刻
阿儂(アノウ)と云し女あり惨毒(サンドク)にして小児の肉(二ク)を好み食毎(シヨクゴト)に殺(コロ)して食せしと也是のみならす人の肉を喰(クラヒ)し者(モノ)数多(アマタ)輟耕録(テツカウロク)に載(ノセ)たりかやうに暴(ボウ)酷(コク)なる人|惨毒(サンドク)にして山谷(サンコク)の間(アイダ)に住(ス三)人の肉を嗜(タシナミ)し事|例(タトエ)なきにあらすしかれとも全(マツタ)く鬼(ヲ二)の形(カタチ)にあらず只(タヽ)幽妙(ユウメウ)なるを神(シン)とも鬼(キ)ともいふなり
惣じて鬼は陰に属(シヨク)す人を殺(コロ)し物(モノ)を破(ヤブ)るも陰の業(ワサ)也然れは人の肉を食する者(モノ)も鬼(キ)に属(シヨク)すると知るべし