翻刻
さわぐ程にまどいやすき人心にて其度々に驚き騒ぎ何事も
なさでこなして守りくらしたりしかどきのふけふはふるひも
やみ何の恙もなく相知りたる人はた無事なれば互によろこ
びいひかわ【右には】 しなどして心の落居るまゝにつく〴〵と考ふれ
バこたびの地震は去年の夏雨なかりしによりて炎熱の地中
に爵伏せしをことしとなりても雨たに多ければかゝる大変にも
ならずして程よく散發もすべきに苗さへ水に乏しかりしかば
去年のまゝに蟄したるが夏の気にさそはれてかく一時に激發
せしなるべしさらば何方も同じさまにこそ有べきに国所により
て強弱のあるはいかにそやとおもへどもそれは炎熱の気を敷?而
事の軽重と土地の堅懦【ダ よわい:愞は懦の略字】によるなるべしとにかくに此度の地震こそ
一時發陽の地震にてはあらじと覚ゆれば他の識者之さだめを待
事なれどいたり深からぬ心に思ふまゝを筆の序にしるし置て万
用記の追加とする事になん
嘉永七年六月廿五日
【以下赤字】
當嘉永七寅年六月地震あり又十一月四日朝五ツ半時大震
し続いて大津波あり詳しき事ハ別に書記置たり
尚十一月四日震ひし奈良市の状況【右にを記し】したる書もあり
披見せらるべし 樟蔭誌