翻刻
ヅアリ【ヅアリに傍線】が其市の破壊を予言せしは之に因りしなり千八百三十一年シ【シに傍線】
ントレモ【ントレモ傍線】の地震及び千八百六十八年イツイツク【イツイツクに傍線】の地震前には同じく地
下の鳴響を聞しといふ其等の事実は本邦人の常に覚知する所
にして地震前には必ず鳴響の来る如く一般に信し居れり
一 動物の異状によりて地震を前知せしコトは古へより多くある事実
なりカラカス【カラカスに傍線】の土人は多くは犬猫等の動物を飼育し其不安の挙
動を見て地震を予知すカラカス【カラカスに傍線】に於て千八百十三年の地震に先ケ
一頭のスペイン【スペインに傍線】馬厩内より逸出して高阜に走り千八百二十二年チリ【チリに傍線】
の地震前海鳥群飛して陸上に集まり又此地震の最終劇動前
には犬類挙つて奔逸せしという又雉子の地震前に鳴く事は本
邦人の常に実験する処也
一 旧記を見るに弘化四年三月廿四日信州の地災の前同年二月中旬気候
盛夏の如く十八日霜降り桑花枯る事甚敷山中池水凍り或は忽ち
雷鳴を聞く然れ共常日は快晴暖気にして至極平穏なりし又安
政二年十月二日東京大震の前井水増し浅草神田の地面に噴水せ
し処あり同夜震前鶏の宵啼多く又烏も啼くこと繁かりしと
一 又旧記に老農野に耕す時煙を生ずる如きを見て将さに震せんと
するを知ると又井水俄に濁り湧くも亦震徴なり又世に云ひ伝ふ
るは雲の近くなるは地震の徴なりと其他屡々震前日及び月の
出没時に其色血の如しと云ひ震前雲の如く霞の如く地気上昇
すると記せり佐渡国金山にては地震前坑内地気上昇して傍な
る人も互に腰より上は唯濛々として見へず是を地震の前徴と