翻刻
弐拾町を隔て橈を止め碇を卸千帆爰に畳対
陣とも見えけり猶もつら〳〵□#1しにイギリス軍船
にて■#2指物吹貫等押立て万端美々として
日に暉き風ひるかへる有様誠に人眼を驚かす而已
ならす百尺の層楼に打登遠望鏡をもつて国
郡測量之様子に付陣営を配烈し連浦の忍頭其外
小頭遠見等四方八面に詞□【伺ひヵ】相詰候軍勢今日は是非
対に雌雄を決し船中残りなく打果さんと揉にもんで
勇に立て押寄けりいづれも大将中将分は名馬にま
たがり又は押立にて皆具を調相詰たる内は
大隅守惣勢彼軍艦を見かけ時に声をはつし
大筒数百発筒先を揃へ一時に打放せば其響き海
底も震動するか大山もくづるゝ如く是を聞に同郡は
勿論隣国迄も老若共に目をまやかし気を冷し
門外えも出へきものなし船を組駒をならべて打
入之くつばみをひたして責戦ふ共矢玉に当りけん
檣三本え火移軍兵之内にも猛勇之者は是を見て
詞のはな座上にひらきなくいさむもあり時々彼方より
ボンベン打放しこの矢玉に当たり大隅守惣勢之内讒#3に
拾有五人相果勝に乗て猶も挙ボンベン打発候得共
未た測量之間合も無之惜ひかな先陣より壱丁計
先之海中へ打止候計にて此方迄は打砲も届きかね