翻刻
免許なき砌は船中矢玉之あらん限り戦も可仕存念を以
渡海に及ひ難船五艘は琉球え棹をめぐらし否待
請に間合もなく未熟之者共此壱船に乗籠当津
着岸に差登り韓信の背水ことく水におぼれ死
する事もあらんかと思ひ備を立て聊の術もあれ□
暫時につき既に籠中の鳥網代の魚一陣破れて
残徒全からす我等も生死に今不覚と猫を見し
鼠より猶恐■#1【=恐怖ヵ】の思ひを立て億【臆】する事も理り
なり又住ば都異国の事も思ふ時はをろか成ける
身の上と唯徒然として捕子のもの互に月に月?
詠めやひ?故郷之情を頭上に出し中にも子を多く
持もありたとえば焼野のきゝす夜の鶴うつはり
之燕も皆子ゆへにこそ物思え含も道理なり然に
此悪徒等を厳重に取■【囲ヵ】に獄舎に捕込兎角いふ間も
江府之届ケ第一と時日責さん?より急き注進と
いふ間もはやく陣付松平大隅守家臣安田半之丞
走馬にまたかり浸々として出府いたし前顕之始末
江府の届此時に済と否殿中諸役即刻集会を
催し胸に手を置憤を含もあり評論待々になり
半之丞鞭打返し薩州さして帰りけるしかるに
十日酉の剋にも及ひ候得は肥州佐賀之城主鍋島