翻刻
し四方をわかちて其名を記(しる)し其のついでをつ
らね侍(はべ)りぬこれをたづさへてその所にゆき其
名をたづねば知らずして空しく過るのうらみ
なかるべし」ト嗚呼翁ノ心ヲ用フルコト此ノ如
シ其書後世ニ存シテ永ク衆人ニ傳誦セラルヽ
ハ決シテ偶然ニアラザルナリ之ヲ空詩浮文ニ
精神ヲ耗シテ毫モ世ニ益ナキ者ニ比スルニ其
得失果シテ如何ゾヤ大内君熱海獨案内ヲ著ハ
ス文解シ易クシテ事皆実ヲ記ス之ヲ携ヘテ熱
海ニ遊バヾ其地一切ノ事皆指掌スルヲ得テ初
往ノ客モ亦其景述を窺ハズシテ徒ニ帰ルノ憾
ナカルベシ予君ガ用意ノ深且切ナルヲ悦ビ鄙
説ヲ巻端ニ弁シテ以テ蕪辞ヲ徴セラルヽノ責
ヲ塞グト云フ
明治十八年八月 島田三郎撰