翻刻
トスル文ト謂フベシ我国支那ノ余弊ヲ承ケ
一切ノ文章語句ノ格調ヲ主トシテ事実ノ如何
之ニ次ク故ニ紀行ノ文大抵詩章ノ体ヲ帯ブ道
程ヲ記スレバ曰ク約数十里高山ニハ即チ天ヲ
突クト云ヒ大河ニハ則チ千里ノ長江ト云フ一
読シテ壮快ノ念ヲ生スルガ如シト雖モ之ヲ以
テ行旅ノ便ニ供セント欲スレバ則チ道路ノ遠
近知ル可カラズ山川ノ位置弁ズ可カラズシテ
巨匠ノ傑作モ只坊間一篇ノ案内記ニ如カザル
ナリ且其書大抵漢文ヲ用フ之ヲ文詞ヲ衒フ者
トセバ則チ可ナリ之ヲ実用ノ書ト云ンハ則チ
甚ダ遠シ獨リ貝原翁ノ諸遊記ハ然ラズ其文詞
簡淡ニシテ要事ヲ縷挙ス能ク流弊ヲ脱シタル
者ト謂フ可シ其亰城勝覧ノ自序ニ曰ク「この都
の内外の名區櫛のことくに比(つら)なり陳述|碁(ご)の如
くに布(しけ)ることを亰なる人だに知らざるも多か
りいはんやいなかよりはじめて来れるひといま
だ名勝のある所をしらでゆく〳〵|空(むな)しく過な
んもうらみおほかるべしかゝる人にしらしめ
んれうに日々に遊観すべきほどのかぎりを為