翻刻
たる荷物を持運ふにもさまよふのみなれは
ありあわせたるてうちんを竹丸太の
先に結付て小屋の前に立潰れ倒れて
てうちんたにあらぬものは小風呂鋪手拭
なんとを杖ほうきの先に結付て小屋の
屋根にさして是を目当に持運ひかゝる
おりしも風雨ます〳〵夥しけれは
囲はあれとも風を除けす屋根はあれとも
雨を凌かす東より南をなかむれは広
〳〵たる田畑闇夜に形ちをわかたすして
沖の江の浪に漂よふ苫舟の焼火を見るか
如く物淋しく又哀れにして霏りほらりと
そこかしこに見ゆるのみしつまりかへつて
ありけるいかなる心地と我身におしあて
物すこく胸中に懲へ北より西を詠れは
拾丁有余一円の盛火空にうつり味噌
□硫黄金なものゝ火は青黄赤白黒と
いへとも其色また恐しく焔硝に火
移り辺りなる潰れ家を刎とはし其響き
雷公の落るか如く宇宙は闇夜にして