翻刻
猛火の勢を降下る陰雨にとぢおさへらるゝの
心地おのつから五躰に微へ実に地水火風
空の苦患眼前の地獄おそろし
かりし事とも也
かゝる天変不思儀なる災害なれはその広太
なる事拙耳目には及ひかたくはた愚
毫に尽かたし日を追て見聞する事を
後編まてに記すといへとも九牛か一毛にして
万分のひとつも微力におよはす
抑廿四日亥の刻災害発してよりこのかた
己か身のうへのみ記せしは他の成行を
不知るに等しく事実詳かならさる
に似たりといへとも是畢竟広大なれは也
同おのれか身のうへの憂艱難の手続を
もつて実録とす他の苦患も斯なれは
推量りて後にも猶恐怖すへし哀
無情なる事を思ひて
三災変死諸群霊魂有無両縁菩提并
牛馬有非常草木鳥獣虫類変災菩提