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跡を隠して得さすへし萬事頼むと言置て把る袂引分
馬牽寄て打乗て跡をも不見して馳て行与市御
諚承りつく〳〵物を案するに野村の家を此時に絶し
給はん事共を御先祖に対しても不孝の至りと存る也
未幼少の人々にて御恥辱共不覚共誰かは謗り可申
落はやと老母をはしめ親子の人々相具して行方不知
成にける扨も野村か館へと急ける道にて行逢互に馬
より下り野村始終を言語り泣より外の事はなし野村
申ける様只爰許にて闇々と腹切んもいひかひなし討手
の勢を待かけ手柄のほとを尽して戦か又都の郡一行
討死するか如何あらんと言けれは福永つく〳〵と思案して
討手の勢と申すも昨日けふ肩をならへて膝を組し傍輩也
争ふへき恨なし主君伊東殿へは恨は数々多けれ共君々
たらすといへ共臣以臣たらすは不可有と聞時は弓を引も
仇言也死を一挙に定は安し謀を萬代に残すは怪し
先かたはらに忍ひつゝ世の有様を伺ふへし先此方へと申
けれは野村聞て命惜に似たれともいはれを聞は理り也
去なから此姿にては叶まし出家を遂んと言けれは福永
か譜代の郎等に渋谷権之尾【?】とて大剛の者有けるか進
出て申けるはこは浅間しき御事かないかに命おしきとて
出家に成法や有某一人有うちは千騎万騎と思し召
是より紙屋の里に無二の知人候へは彼方へ落させ給ひつゝ