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房を近付てか様の次第にて福永館へ打越る是を最期と
思ふ也我等討れて有ならは敵是へ乱入浮めを見せんは必定也
如何せんと泪に咽ひたり女房聞て是は夢かや現かやと少時
消入泣給ふやう〳〵心を取直しこは浅間敷次第也弓矢の
家に生るゝ者か様の事有へきとは覚て覚悟もしたる事なれ
は先ツみつからを御害し二人の若共御手に掛させ給へかし死
出の山三途の川を御心安く越給へと潔くは言けれとも
花の様成若共を只今殺さん恩愛の別れ羈強くして
倒れふして我身の上はしらすしてなふ何方に行給ふそや母をも
我をも連させ給はんはてはやらじと泣さけふ袂にすがり留れ
はさしも猛き重綱も心も乱肝消てあゝ口惜や我日ころ
余多の敵に掛合度々高名はしけれ共四方も晴て覚るにかゝる
哀は身に染て骨髄に通り刀及ぬ次第也夫仏経にも恩
愛の妻子は三界の枷と御戒め今身の上に知られたりと
思へ共更に罪なくそゞろに泪を流しける斯て不可叶と眼
を開き牙をかくし刺殺さんとする処に老母走来り浅ま
しやと取付て絶焦れて泣給ふ先母上をや殺し申さむ
如何せんと思ひつゝ前後左右も弁へす心体爰に極つて
そゝろに時刻も移しける乳房の母を情なく我手に掛
て殺しなは左こそ仏神三宝もにくしと思しめさるへしと
左あらぬ体にもてなして家に伝はる郎等に竹部与市
を近付か様〳〵の次第也母や妻子を汝か手に掛害しつゝ