翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

鶯宿雑記. 巻199-200 - 翻刻

鶯宿雑記. 巻199-200 - ページ 3

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【後筆書入分は後回し、本文のみ翻刻】 鴬宿雑記百九十九草稿    越後国大地震一件【文政三条地震】   越後国古志郡蒲原郡村〻地震ニて建家震潰   即死怪我人等之義ニ付御届書  村高壱万五千弐百五十八石九斗八升弐合六勺七才  村数五拾五ケ村 家数弐千百三軒之内 一潰家千三軒 内寺四ケ寺 社家一軒 一半潰家六百三拾四件 内寺十弐ケ寺 外ニ家四百八十弐軒症小破 一潰高札場弐ケ所    一潰郷蔵四ケ所 一同社弐ケ所      一同湯小屋壱ケ所 一即死人百九人《割書:男三拾八人|女七十壱人》 【後筆書入分】 本文越後大地震ノ一件写し置し後又北国の風俗口説とて風俗ニてか様之事等有之節ハ誠ノ戯ニ作リ児女子ノ唄コトノヨシ 是ハ其国風ニて是等ノ戯を以て此風俗ヲ御【ぎょす】其時々諸役人之風儀等迄天人を以いはしむるの【右に「の」と追記】諺を捨領分ノ方知尋拠て 賞罰ヲ行ハルヽコトトシテ今ニ上杦家此遺風アリテ善政ノ行ハルヽコトトヨテ越後口説トモ上杦口説トモ云コトト依テ見捨ニセンモ 惜ケレハ爰ニウツス置畢ぬ 越後口説今世ニ瞽女口説トテ江戸辺マテ門ニ立テ三弦ヲ以テ勧進スルハ是ナリ 天地開けてふしぎをいはゝ近江水海スルカノ冨士ハたんた一夜ニ出来たと聞たそれハ見もせぬむかしの事よ爰にふしきは越 後ノ地震いふもかたるも身の毛かよだつ頃文政十一年の時ハ霜月半の二日朝の後五ツとおぼしき頃にとんとゆりくる地震のさハきたはこ 一ふく落さぬうちに上ハ長岡新潟かけて中に三条今町見付つふす跡から一時のけふり夫に続てよ板やつはめ在の村々其数しれす 潰す屋しきは幾千万そさすや梁柱や桁に背骨かたこし頭をうたれ目鼻口より血を吐なからのかれ出んと狂気のことく もかきくるしミつい果絶【絶果か】る手負死人ハ書尽されす数も限りもあら情なや親は子をすて子は親をすてあかぬ夫婦の中をも いはす捨て逃出す其行先は炎をもえたつ大地かわれて砂を吹出し水もミ上て行にゆかれす彳む【たたずむ】内に風ハ烈しくうしろをミれハ 火のこ吹立火炎をかふりあつやせつなやくるしやこわや中にあはれは手足を挟ミにくをひしげれ骨打砕き泣つ叫つ助て呉 とよべと招とのかるゝ人も命大事と見向もやらす覚悟〳〵と呼ハりなから西よ東よ北南よと思ひ〳〵に逃行声は実や喚叫【叫喚か】大叫 喚の責も是にハよもおとらしよ見るも中々骨身に通る今ハ此の世かめつしてしまひみろく出世の世と成やらん又は奈落へ沈も するかいふもおろかやかたるも涙急に祈祷の湯の花抔とせつな念仏となへて見ても何のしるしもあらおそろしや昼夜うごきハ少しも やます凡七十余日【右に追記】か間きもゝ心もとふなる事と親子兄弟皃【かお】見合て共に溜息突いる斗御大名にハ村上しはた其外に御料御陣屋 旗本衆も思ひ〳〵に御手当あれと時か時とて空打くもり雪ハちら〳〵寒さハ増る外にいられす涙の中に一家親類寄集りて 大工いらすの掘立小屋につゝれかぶりて凌とすれとふゞき立込目も合されす殊にことしハ大悪作て米ハ高直諸色ハ高く 夫に前代未聞の変事是をつら〳〵考見るに士農工商儒仏も神も道をハすれて利欲に迷ひ上下ハかたぬ奢をきはめ 武家ハ武を捨十呂盤【そろばん】枕夫に習ふて地下役人も下をしへたけ己をおこり昔違作の年からあれハ葛を堀たり砂【磯】菜をひろい 夫て己か命をつなき収納作德立しと聞に今の百性ハ夫とハ違ひ少し違作の年からにても検見願ひの拝借なとゝ 上へ御苦労かけたる下たハ有の無のと親方マヘハ無勘定にて内證ておごり米の黒いハ大損なとゝみそハ三年たゝねハ 喰ぬ在郷村にも髪【髪結】風呂屋煮うり小見せの床前見ミれハ笛や三味せん大鼓をかざり紋日もの日の其時〳〵ハ若いもの 共寄あつまりておとりけいこの地芝居なとゝつかひちらして出所にこまり一ツ袷に縄をハかけてつゐにしまいハ 他国へ走るなこや水呑奉公人も羽おり傘たび塗下駄に下女や子共も盆正月ハいつちわるいかちりめん帯て銀のかんさし 鼈甲の櫛よ開帳参りの風俗見れハ旦那様より御供か りつハそれハまだしも大工の風義結城わた入はかたの帯に紺の股引白たびはいて朝ハおそふて休か長い作料まさねハ行 ことならぬ酒ハ一日二度出せ抔と天を恐れぬ我儘斗 日雇まて道理をわすれ 普請家作のはやるに任せ 出入旦那も御無沙汰斗下々ハ十日も先からたのミやつと一日顔出すさへもきけんとらねハ日中ハあそぶ夫に准して町家のふしん 互に美々敷せり合故か 二重たる木に銅巻て家ハのしふき柱のたけハ丁度むかしの二本の長さ樫木すくめの造作見るに御殿まがいか拝殿か地下の家 作とみられぬ仕懸前を通るも肩 身かすほるされと心ハけものおとるいかな困究【窮】の年からにても収納屋賃の用捨もあらす少しさがると店追立て田をハ 上ケよと小前を責 て慈悲の心はけし つふほともないハことわり浮世の道理深く考へしらさる世故そ世間豪家の家風を見るに古い持家ハ勘弁有て俄分 限ハ萬事かひとひわるひ 心ハ見習やすく 裏屋店かりぼてふり まても米か 安いとけんし き高く在郷ものをハ足下に見なし五十まうけりや口米あるといふにいはれぬ荒言はいて義太夫めりやす冨本なとゝ 一寸しやれにも 江戸まえはかり夫ハさて置此近年の儒者の風俗つく〳〵見るに黒羽織に大小帯し詩だの文たの講尺抔と鼻の高いハ天狗 もはたし銭の ないのハ乞食におとる昼夜大酒乞食におとる【以上十文字写し誤りカ】昼夜大酒どうらくつくし己斗か弟子共迄も金をつかふか風流人よ道を守か 俗物なとゝ冥利知 すの銭金蒔 て書物よミ〳〵 身上潰す分て近年寺衆の風儀聖祖禅寺と勿体らしく赤衣ハ白粉くさく光るおけさハさし身のかほり尼の三衣ハ 子持の匂ひ朝の勤ハお小僧斗宵の勤ハ鐘打斗 昼夜こめぐり慰斗祖師や御上の信を背き酒と 賭て寺役を わすれ居間の柱の 状さしミれハさまハ丸さま御存ゟとへたてのかいたるかな文斗門徒寺衆ハ利欲に迷ひ勧化一座にほふしやハ四五度