東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 4

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - 翻刻

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - ページ 17

ページ: 17

翻刻

【右丁】【句点の「・」を「。」にす。】     劉類(りうるい)竜肉(りやうにく)を醢(しゝびしほ)にする事 夏(かの)禹王(うわう)より十五代の帝(みかどを)孔甲(こうかう)と云(いふ)。鬼神(おにかみ)を好(この)み淫乱(いんらん)を 事(こと)とし政道(まつりごと)正(たゞし)からざりしが。一日(あるひ)朝門(みかどのもん)の外(そと)に雌雄(しゆう)二つの 竜(りやう)。天より降(くだり)て升(のぼ)らず。帝(みかど)其 吉凶(きつけう)を群臣(ぐんしん)に問(とふ)。蔡史(さいし)と いふ臣(しん)。奏(そう)して曰(いわく)これ吉祥(きちじやう)の瑞相(ずいさう)なり。宜(よろ)しく是を養(やしなふ)て おのづから去(さる)を待(まち)たまへと。帝(みかど)奏(そう)に准(したが)ひ。すなはち劉類(りうるい)と 云(いふ)臣(しん)に宣(みことのり)して是を養(やしなは)しむ。劉類(りうるい)よく飲食(いんしよく)を調和(とゝのへあわ)して 養畜(やしなふ)こと。おこたらざりしが。或時(あるとき)雌(し)【左ルビ:めん】竜(りやう)たちまち死(し)したり。 劉類(りうるい)これを醢(しゝびしほ)にして帝(みかと)にたてまつる。孔甲(こうかう)是を食(しよく)するに 其 味(あぢわひ)はなはだ美(び)【左ルビ:うまし】なりければ。再(ふたゝ)び劉類(りうるい)に雄(おんの)竜(りやう)をも醢(ひしほ) にして献(たてまつ)るべきよし勅定(ちよくぢやう)ある。劉類 思(おも)ふやう。自死(おのづからし)する者(もの) こそ醢(しゝびしほ)にもなるべけれ。生(いき)たる竜(りやう)はいかにしてか。近付(ちかづき)殺(ころ)す事を 得(ゑ)んやと。大におそれて夜中(やちう)に逃去(にげさる)。帝(みかと)は此 由(よし)を聞(きゝ)。大に 【左丁】 怒(いか)り武士(ぶし)三百人に命(みことのり)して竜(りやう)を捉(とら)しむ武士(ふし)等(ら)養竜(ようりやう)の 池水(いけみず)を放(はなち)乾(かは)かし矢(や)を揃(そろへ)て是を射(い)る竜(りやう)はよく霊(れい)に通(つうず)る 物なれば身(み)を飜(ひるがへ)して一たび揺(ゆる)げば忽(たちまち)空(そら)かき曇(くも)り雨風(あめかぜ) しきりに吹(ふき)降(おち)て雲(くも)を半空(なかぞら)に騰(のぼ)し三百人の武士(ぶし)みな池(いけの) 中に捲(まき)入 雷(なるかみ)電(いなつま)三日まで止(やま)ず帝(みかど)是より病(やまひ)を受(うけ)て遂(ついに)崩(ほうす)  趙弼(てうひつ)評(ひやう)して曰(いわく)四霊(しれい)の物 竜(りやう)より霊(あやしき)はなし能(よく)幽(かすか)に能(よく)明(あきらか)に大小に  変化(へんくわ)し飛騰(とびのぼること)量測(はかりしる)べからず故(かるがゆへ)に升(のほり)降(くだる)之(の)際(あいた)雷電(らいでん)風雨(ふうう)其(その)神異(あやしき)を助(たすけ)  雲気(うんき)晦瞑(くらく)山嶽(やまだけ)形(かたち)を失(うしな)ひ江河(ゑかわ)泛(うかれ)溢(あふれ)波涛(なみ)震(ふるひ)蕩(たゞよふ)孰(たれ)か能(よく)これに  近付(ちかづか)んや若(もし)擾(なれ)養(やしなひ)すべくは牛(うし)馬(むま)と異(こと)なる事なし必(かなら)ず時(とき)に或(ある)ひは  異物(ことなるもの)竜(りやう)の形(かたち)に肖(に)たる者(もの)あつて故(かるがゆへ)にこれを養(やしなふ)事を得(ゑ)たる歟(か)吾(われ)は  信(しん)ぜずと或(ある人の)曰(いわく)然(しか)らば三百の武士(ぶし)竜(りやう)のために池(いけ)中に捲(まき)入られしと  云(いふ)も非(ひ)なるか散人(さんじん)が曰(いわく)是は竜と云(いへ)るを以(もつ)てかくの如(ごと)く勢(いきほひ)を書(かけ)り  文勢(ぶんせい)と云もの也今 画工(ゑかき)の竜を象(かたと)るに四足(しそく)に火炎(くわゑん)を画(かく)も勢(いきほひ)を写【左ルビ:うつす】筆勢(ひつせい)也