翻刻
【右丁】
精衛(せいゑい)公主(こうしゆ)西王母(せいわうぼ)に遇(あふ)事
精衛(せいゑい)公主(こうしゆ)は炎帝(ゑんてい)神農氏(しんのうし)の御女(むすめ)なり生得(むまれつき)美麗(びれい)にして螓首(しんしゆ)【左ルビ:たちのひしくび】
蜂腰(ほうよう)【左ルビ:ほそきこし】真(まこと)に閑月(かんげつ)花を羞(はづ)るの容貌(よそおひ)あり一日(あるひ)落花(らくくわ)を見(み)て嘆(たん)【左ルビ:なけき】
じて曰【左ルビ:いわく】盛(さかん)に開(ひら)ける華(はな)も時(とき)あつて枝(ゑだ)を辞(じ)す人生(にんぜい)金石に
あらざれば誰(なん)ぞ顔(かんばせ)を改(あらため)ずして存命(ながらへ)んやあはれ長生(ちやうせい)
不死(ふし)の道(みち)もやと爾時(そのとき)空中(くうちう)より車(くるまの)声(こゑ)轔々(りん〳〵)として西王(せいわう)
母(ぼ)形(かたち)を現(あらは)し告(つげ)て曰(もうさく)公主 出塵(しゆつぢん)の思ひあらば凡心(ぼんしん)を去(さり)意(こゝろ)
を堅(かたく)して仙宮(せんきう)に至(いた)るべしとて辞(じゝ)去(さ)れり公主(こうしゆ)よろこび
次日(あくるひ)父母(ふぼ)に告(つげ)て数十(すじう)の侍女(おもとびと)と同じく船【舡】に上(の)り東海(とうかい)に出(いて)
游(あそ)ぶ半塗(はんと)に東莱(とうらい)といふ島あり公主 其処(そのところ)の美男(びなん)を見(み)て
恋(こひの)心を生(しやう)じ道心(だうしん)稍移(すこしうつ)る遂(つい)に蓬莱宮(ほうらいきう)に至(いたる)ことあたはず溺(おぼれ)
死(し)して化鳥(けてう)となる此 鳥(とり)常(つね)に西山(せいざん)より木石(ぼくせき)を銜(ふくみ)【啣は銜の俗字】来(きたつ)て東(とう)
海(かい)を埋(うづめ)んとすこれを精衛鳥(せいゑいてう)と云(いふ)とかや
【左丁】
精衛(せいゑい)公主(こうしゆ)
西王母(せいわうぼ)に
逢(あふ)図(づ)
【挿絵】