東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 4

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - 翻刻

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - ページ 9

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【右丁】   黄帝(くわうてい)滅(ほろぼし)_二蚩尤(しゆう) ̄を_一 《割書:并ニ》始(はじめ)て指南車(しなんしや)を作(つく)りたまふ事 炎帝(ゑんてい)神農(しんのう)より八代の帝(みかど)を楡岡(ゆかう)と云此時に当(あたつ)て蚩尤(しゆう)と云 逆臣(げきしん)悪(あく)を肆(ほしいまゝ)にして乱(らん)を興(おこ)し諸侯(しよこう)を責(せめ)なびけて天下を動(うご) 揺(か)す帝(みかど)不徳(ふとく)にて制(せい)すること能(あた)はず敗北(はいぼく)して涿鹿(たくろく)へ逃(にげ)入し かば蚩尤(しゆう)は都(みやこ)に入 位(くらゐ)に坐(ざ)し却(かへつ)て涿鹿(たくろく)を攻(せめ)て取囲(とりかこむ)こと雲(うん) 霞(か)の如(ごと)し爰(こゝ)に炎帝(ゑんてい)の後裔(こうゑい)に有熊国君(ゆう〳〵こくくん)の子(こ)軒轅(けんえん)と云 人あり徳(めいとく)をおさめて人 民(みん)帰服(きふく)【左ルビ:なびきしたがい】し三万 騎(ぎ)の兵(つわもの)を領(りやう)し帝(みかど)を 援(すく)ひ蚩尤(しゆう)が大 軍(ぐん)へ突(つい)て入蚩尤 目(め)を嗔(いからか)【瞋とあるところ】し歯(は)を切(くいしめ)て軒轅(けんえん)と戦(たゝかふ) こと百 余合(よがふ)蚩尤 打負(うちまけ)て走(にげ)けるが忽(たちまち)妖術(ようじゆつ)を施(ほどこ)し雲(くも)霧(きり)を動(うご)かす 味方(みかた)前後(ぜんご)を亡(ぼう)じて敗軍(はいぐん)す軒轅(けんえん)又 謀(はかりこと)を廻(めぐ)らし指南車(しなんしや)を造(つくり)軍士(ぐんし) を乗(のせ)再(ふたゝ)び戦(たゝかひ)を挑(いど)む蚩尤又 霧(きり)を起(おこ)しけれ共 指南車(しなんしや)在(あつ)て敵陣(てきぢん) に望(むかひ)て進(すゝみ)ければ味方(みかた)軍(ぐん)を乱(みだ)さず終(つい)に蚩尤を滅(ほろぼ)し給ふ天下 の民(たみ)其徳を尊(たつと)み推(をし)て帝王(ていわう)とす是 則(すなはち)黄帝(くわうてい)と申 聖王(せいわう)なり 【左丁】    平羿(へいけい)夫婦(ふうふ)登仙(とうせん)の薬(くすり)を得(ゑ)て月宮(けづきう)【濁点の付間違いヵ】に至(いた)る事 帝(てい)尭(ぎやう)の時 悪獣(あしきけだもの)有て人を害(そこなふ)によつて平羿(へいげい)に命(みことのり)してこれを 平(たいらげ)しめ給ふ羿(げい)は勅(ちよく)を承(うけたまは)り我家(わがや)を出て是を制(せい)す去(され)ば羿(げい)が妻(つま) は其(その)容皃(かたち)美(うつく)しく其 心様(こゝろばへ)も亦(また)好(よ)し然(しか)るに今度(このたひ)夫(おつと)他国(たこく)へ出(いで)し より跡(あと)に残(のこり)て深閨(しんけい)【左ルビ:ふかきねや】にたゞ独(ひと)り夫(おつと)を慕(したひ)て輾転(ふしまろび)さても夫(おつと)の おとづれはいかにやと寤(さめ)ても寐(ね)ても思ひ侘(わび)て年月(としつき)を送(おく)り ける或夜(あるよ)夢(ゆめ)に羿(けい)帰来(かへりきたつ)て薬丸(やくくわん)一顆(いつくわ)を与(あたふ)ると見て驚(おとろき)覚(さめ)て 側(かたはら)を見れば実(じつ)に丸薬(ぐわんやく)ありけり妻(つま)不思議(ふしぎ)におもひ我夫(わがおつと) もしは死(しゝ)たるやらんといとゞ思ひを燋(こが)し夜(よ)の明(あく)るを待(まち)けるが 漸々(やう〳〵)平明(あけほの)の比(ころ)夫(おつと)の羿(げい)実(じつ)に帰来(かへりきたり)て彼(かの)夢(ゆめ)のやうを聞(きゝ)誠(まこと)に 前年(むかし)山に入 道(だう)を学(まな)びし時 西王母(せいわうぼ)に不老(ふらう)不 死(し)の薬丸(くすり)を 授(さづか)れり是は定(さだめ)て相(あひ)恋(おもふ)の感(かん)ずる所なるべしさらば此 薬(くすり)を 服(のみ)て偕老(かいらう)の衾(ふすま)の下に長生(ちやうせい)の契(ちぎり)を結(むす)ばんとて試(こゝろみ)に是を 呑(のめ)ば妻(つま)は習々(しう〳〵)と飛(とび)て空(そら)にのぼる羿(げい)も亦(また)その裳(もすそ)に取 つきすがつてともに月宮(つきのみやこ)に入る妻(つま)は嫦娥(ぜうが)となり羿は蟾蜍(せんぢよ)となる