翻刻
【右開】
事/所(ところ)なり
○神祭(まみまつ)りは醫(い)法にあづからぬ事ゆへ其心に任(まか)
すべし種痘は一切(いつせつ)忌憚(いみきらい)なきを妙とす只/痘漿(たね)の
善悪に因(より)て痘の染不染(つくふかぬ)あり故(ゆへ)に種痘に念(こゝろ)ある
人は醫の動(すく)むる時は前に言る如く大凡(たいてい)の差(さ)し
合(あい)は捨(す)て置(おき)て種(う)ゆべし惣て種痘醫は漿の続(つい)く
を専(もつぱ)らとし棚(あわれと)塩(おけふ)の術(わざ)を行(おこな)う心(こころ)上より嬰孩(えどりご)を愛(あい)
する事/親疎(しんそ)の別(わかち)なく当(しかも)大陽(にちりん)の六合(せかい)を照臨(てらし)たも
ふが如とし
散花養生訓 終
【左開】
○此の散花養生訓(かへそうそういやうじやうくん)は種痘中/摂生(やうしやう)の次第(くわい)を
問るゝに人毎(それ〳〵)に答るに迎(ひま)あらず且つ言語(いふこと)
は聴聞(きくように)の間(より)誤(あやま)りなき事能わず故に至要(うんよう)の
一二言を綴(つゞ)り傍(かたわ)ら答訓(こたへ)の労(めんどう)も劣(はぶ)くが為に
木(はん)に上(ほり)し家塾(いへ)に蔵(おさ)めり必ず公にするに非
らず尚種痘の委曲(くわしきこと)は予が耕(つヾ)り作(な)す種痘(しうとうせう)に
言(げん)に見へたり他日(ちか〳〵)夜々梨(はんにほること)を果(はた)さば諸君子の
槃生を希ふと伝 角
安政二年未巳外秋日 散花堂施印