翻刻
【右ページ上段】
税所敦子、下田歌子題詠
三輪田眞佐子序
《箱:名女傳》定価六十五銭
郵税八銭
本書は瀬川さわ子女史の多年辛苦して編
纂せられし名女の伝記にして顕貴、賢母、孝
女、貞婦、名媛、才藻、卑女の七門に分ち此に
漢土名媛、泰西女傑を附し其の性行履歴を
叙述し鮮明優美なる図画数十葉を挿みし
菊版三百五十余頁の冊子にして用紙装釘
共に良好なれは紳士淑女は必らず携帯せ
らるべき者たり
《箱:花鳥画譜》美本全一冊
定価二十八銭
郵税二銭
本譜は斯道に有名なる福井江亭先生の画
かれし花鳥図にして運筆精巧彩色鮮美人
目を拭ふに足る用紙はいよ柾紙にて印刷
亦佳良なり好画家は一本を求めざるべか
らす
発行所 東陽堂支店
【右ページ下段】
故村垣淡路守範正記述 行程世界地図入
遣米使日記
定価金三十銭 郵税金四銭
徳川の幕末、尊王攘夷の説熾むなるに、外邦荐りに互市を乞ひ、
太平の夢将に覚めなんとする、安政六年九月十三日亜米利加へ
条約取かはせ仰せ付られしは、正使豊前守正興朝臣、君は其副
使たり、米利堅は皇国と昼夜反対にして一万里外なり、今でこ
そ米国なれ、其頃米国の二字は如何ばかり邦人の胸を騒がせし
よ、かく例しもなき大任を蒙り、君命をはづかしむれは神洲の
耻辱と成らんことと畏みて、翌年正月神奈川を発し東に向ひ地球
を一周して九月西より帰朝し使節を全して、復命に及ひたる
顛末洩らす処なし、殊に珍しきは当時の世界地図に毎日の行程
を明記し艦の所在をしらしむる等用意周到なり。此書は君か其
日々々の出来事を有の儘に日記体に記述したる者なれは、当時
日本人の頭脳を代表して、見る者聞く者毎に奇異の感を懐かざ
るはなし、歴史上外交上の参考として必要なる珍書といふへし
《箱:人体解剖図》著色甲乙ニ幅定価金四円五
拾銭
図解甲乙ニ冊定価金弐拾銭
本図は川崎典民氏英国以丁堡府ジョンストン氏の原図に拠り更
に訂正を加へて精確に調製し人体中の系絲機関の形状位置等を
示したる者なり今や世運日に開け月に進み生理を究め養生を講
するの諸子漸次多きを加へ来れは此国の如き最も必要の具たり
別に図解二冊を添へたれは其の名称等を知るに於て甚だ便利な
り公私立学校又医学生は勿論衛生家は必らず之を購ふて坐右に
備へざるべからず
発行所 《割書:神田区通新|石町三番地》東陽堂支店
電話本局九七〇番
【左ページ上段】
高等化粧料発売広告
●《割書:高|等》化粧水オイデルミン 《割書:一箱三個入|金七十五銭》
皮膚(ひふ)を艶美滑沢(えんびかつたく)ならしむる高等(かうとう)の化粧料(けしやうれう)なれば貴婦人令嬢(きふじんれいじやう)
方(がた)の必要品(ひつえうひん)にして暑中是(しよちうこ)れを用(もち)うれば日(ひ)に焦(や)ける憂(うれひ)なし
●《割書:改|良》びん付《割書:コラキン|玉 椿》 《割書:一 本|金二十銭》
●《割書:改|良》すき油《割書:メラゼリン|柳 糸 香》 《割書:一箱三個入|金一円五十銭》
婦人結髪(ふじんかみゆひ)に用(もち)うる油(あぶら)は蝋製(らふせい)なるが故粘着汚垢(ゆゑねんちやくをこう)し易(やす)く加之(しかのみならず)
一 種(しゆ)の悪臭(あくしう)をかもし常(つね)に人(ひと)をして苦心(くしん)せしむ欧米婦人曾(おうべいふじんかつ)て
言(い)へる事(こと)あり日本婦人(にほんふじん)は柔和優美(にうわいうび)の徳質(とくしつ)ありて寔(まこと)に親(したし)むべ
しと雖(いへど)も頭髪(とうはつ)に一種(いつしゆ)の臭気(しうき)ありて鼻(はな)を衝(つ)き久(ひさし)く座(ざ)に堪(た)へざ
らしむるが遺憾(ゐかん)とすと実(じつ)に然(しか)り弊舗茲(へいほこゝ)に感(かん)あり辛苦研究(くしんけんきう)の
結果優美(けつくわいうび)の油(あぶら)を発売(はつばい)す
●《割書:ふけ|とり》香水《割書:ラウリン|花たちばな》 《割書:一箱三個入|金一円八十銭》
第(だい)一 剛(こわ)き毛髪(もうはつ)を柔軟(じうなん)ならしめ且汚(かつけが)れを清(きよ)め永(なが)く清潔(せいけつ)の状(じやう)を
保(たも)たしむ
●《割書:改|良》水油《割書:オイトリキシン|花 か つ ら》 《割書:一箱三個入|金一円ニ十銭》
在来(ざいらい)の香油(かうゆ)の如(こと)く髪(かみ)に粘(ね)ばりを生(しやう)ぜず亦汚臭(またおしう)を生(はつ)せず毛髪(もうはつ)
の光沢(つや)を艶美(えんび)ならしめ且脱落(かつだつらく)を制止(せいし)し頭皮(とうひ)の疾患(しつくわん)を予防(よぼう)す
●《割書:あか|とり》香油《割書:アネモシン|春 風 山》 《割書:一箱三個入|金一円ニ十銭》
第(だい)一 頭髪(とうはつ)の汚(よご)れを容易(ようゐ)に梳(す)き去(さ)るが故(ゆゑ)に本品(ほんひん)を使用(しよう)せば髪(かみ)
を洗(あら)ふの煩労(わづらひ)なし故(ゆゑ)に病中又(びやうちうまた)は病後(びやうご)に用(もち)ゐて妙(みやう)なり
【左ページ下段】
●ひげ油 《割書:フロネミン|住 之 江》 《割書:一箱三個入|金九十銭》
髭毛(ひげ)に使用(しよう)すれば之(こ)れに適当(てきたう)の粘力(ねんりよく)を生(しやう)じ随意(ずゐい)に形状(けいじやう)を保(たも)
たしめ且在来(かつざいらい)の品(しな)と異(こと)にして之(こ)れを洗去(あらひさ)ること容易(ようゐ)なり
●《割書:改|良》おしろい 《割書:イリアンチン|春 の 雪》 《割書:一箱三個入|金二円十銭》
●《割書:高|等》ねりおしろい 《割書:一箱三個入|金七十五銭》
品質純白緻密(ひんしつじゅゆんぱくちみつ)にして皮膚(はだ)に附(つ)き易(やす)く且佳良(かつかりやう)の芳香(はうかう)を有(いう)し衛(えい)
生上有益(せいじやういうえき)の佳品(かひん)なり
●うがひ水 《割書:エチオン|しのゝめ》 《割書:一箱三個入|金九十銭》
口腔(くち)を清潔(せいけつ)にし粘液(ねんえき)を去(さ)り臭歳(しうき)を防止(ぼうし)す黴菌(ばいきん)を撲滅(ぼくめつ)し虫歯(むしば)
を予防(よぼう)す出血(しゆつけつ)し易(やす)き歯茎(はぐき)を固(かた)む咽喉加答兒(ゐ んかうかたる)を癒(なほ)す一名水は
みがきとも云う
●《割書:福原|衛生》歯磨石鹸 《割書:煉製金廿五銭|同 金十五銭》 《割書:粉製|袋入》金《割書:十五銭|三 銭》
衛生歯磨(えいせいはみがき)は口中(こうちう)の黴菌(ばいきん)を撲滅(ぼくめつ)するの効(かう)あるが故(ゆえ)に伝染病予(でんせんびやうよ)
防(ばう)として一 日(にち)も欠(か)けべからざる良品(りやうひん)なり
以上各種の化粧料は医科大学教授理学博士
長井長義先生の考案により今般弊堂に於て
製造販売せるものにして其品質の良好其体
裁の優美なる眞に高等化粧料の名に背かざ
るは弊堂の深く信ずる所なり江糊の紳士貴
婦人令嬢諸君普く御愛用の上高評を賜らん
事を願ふ
東京市京橋区出雲町 (電話新橋三二四番)
内外化粧品問屋資生堂 福原有信