翻刻
々に有て筆にも尽しかたし吼木山法住寺は則
法住寺村と云に有時に弘法大師法華読誦の声
にしたかひ此磯に船をつけ給ふに何国ともなく老
翁壱人来たりて曰住山に枯木の桜ありて夜々光
物して吼るといへり大師此翁に語て来見給ふに
法華読誦は此木の色也光物は大空ゟ投給ふ所の
五鈷也則一宇御建立有て吼木山法住寺と号し
て大師住給ふ其時の蔵は白山妙理大権現にて
今東の山に大社有大師日本にて初て秘寺建立
の道場にて次第にはん繁栄し嵯峨の天皇
御勅願所となし給ひて代々の帝勅使論旨院
宣ありて七堂伽藍にて境内六拾四坊棟を并へ
寺領千貫山方三里御朱印有一宗北陸道第一の霊
地として其後頼朝公ゟ代々奇願所と也益々栄
へて諸堂美尽し善尽したる霊場なりしに中
頃兵乱に中絶して諸堂兵火に炎上有しに今の
講堂は則頼朝卿再興の所焼残りなりといへり本尊
の霊仏の大像の三尊は兵乱に不思議有て残り