翻刻
ものかさるを蛮夷の風儀究理に《ルビ:浮|な》つみて《ルビ:怪|あや》しむに
足らすとせハ又神仏の利益もあるへからす依而予ハ不思
議も又聞事左にあらハす予か知れる人の娘此地震十四
五日前下谷辺の富家へ奉公に出しか或夜亡父を夢に
見る此父これに示していふ汝此処に居ること《ルビ:勿|なか》れと斯夢
見る事両夜なる故奉公の透を見て母の方へ来りその
夢の趣を咄し暇を乞んと相談すれと母是をゆるさす汝か
心に彼家を嫌ふか故に然る夢も見るものにて有なるへし
未た引越して程もなく暇を乞方便なき所為殊に出入の
失費も少なからさることなりと呟?【「叱」の誤記ヵ】りて返せし翌日に既に
彼の大地震にて怪我をせ?さるか飜れ幸福衣類手道具
丸焼になりしと其老母の物語是も一ツの不思議ならすや
一浅草観音雷神門の木像見えす神通地震を知る故に逃出
たりとの評判高く此時に別当所より彼処に張紙なし全く
木像修復のため仏師屋江遣ハしたりと実を示して虚説
をハ止めしと聞く然れとも木像自然の神通ありて粗此
地震を知る故に修覆の為に仏師屋へ往も人手をかりて逃
たりとせハ是もまた一奇事なり
一同所本堂の裏の方に誰か納めたるか委敷知らねと木馬一疋有けるか此馬翌日能〻見れハ四足泥ニ