翻刻
大きなる故大名衆の目にも留らハ幸ひならんと居へ置し
も鉄を吸ハねハ只の石也定めて多くの年を経たれハ自然
其気の薄くなりたる歟大きなる損毛そと心よからす更る
夜の四ツ時の大地震なり其後彼石に鉄を吸ハすに元の
如くに付によつて大地震有其前にハ磁石鉄を吸ハさるを
発明せしとの咄しなり
一御蔵前の水茶屋にて或人駕籠に乗り来り休息の後腰掛
より又乗出すその時に駕籠《ルビ:舁|かき》杖を建たる跡より水少し
《ルビ:湧|わき》出しか亭主不思議ニ思ひけれハ息杖の穴を掘《ルビ:穿|うかつ》に水
ます〳〵吹【吐を訂正】出し其日の内に地辺を《ルビ:湿|うる》ほし駒下駄なら
でハ歩行かれず依之井戸?を伏しと也然るに此場所は
御改革前喜八団子の庭にして堀井戸の在たりしか取
払ひに成たる節埋立し跡のよし是地震前地気満て
古き水筋水気増て斯吹出しものと覚ゆ其外に諸所
井戸の水増たる話し多く聞バ心得有へき事なりけり
因に云信州の咄しを聞に地震後井の水減少なし呑
水を争ふか故《ルビ:懸守|あかたもり》より役人出井戸毎に付添て一人を
して一ト手桶ツヽ順を立て汲せしとかや是又土地の替る故