翻刻
【右丁】
一種
武州 高尾山(たかをさん)に産(さん)する物(もの)
は葉(は)稍(やゝ)細(こまか)にして尖(とか)りありて
茎(くき)は紅紫色を帯ひ花(はな)は
きんまんの如(こと)くにして瘠(やせ)て黄
色なり葉(は)に臭気(しうき)ありて毒(とく)
あり大観本草(たいく▢[わヵはヵ]んほんさう)に菫黄花(きんわうくは)
《振り仮名:害_レ 人|ひとをかいす》といへり以上三種食す
へからす賤民(せんみん)食(しよく)して大に血(ち)を
吐(と)すといへりきんまんの形やふ
けまんに似(に)たるゆへ混(こん)すへからす
菫(きん)の集解(しつかい)に時珍一種 黄(わう)
花(くは)《振り仮名:殺_レ 人|ひとをころす》といふ物は別物にして
毒草部(とくさうふ)の毛茛(もうこん)なり
【左丁】
一種 けまんさう けまんぼたん ふじほたん《割書:江|戸》
まるぎんちやく 朝鮮牡丹(てうせんほたん)《割書:江陰|県志》
荷苞牡丹(かほうほたん)《割書:秘伝|花鏡》 魚児牡丹(きよしほたん)《割書:同|上》
人家 庭際(ていさい)に栽(う)ゆ春(はる)宿根(ふるね)より生(せう)し葉(は)は牡丹(ほたん)に似(に)て頗(すこふ)る小(せう)にして茎淡紅粉色
紫菫(しきん)《割書:やふけ|まん》に似(に)たり三月 茎(くき)高(たか)さ二尺 許(はか)り穂(ほ)をなして花下垂す紅色にし
て形きんちやく又 華鬘(けまん)の如(こと)し秘伝花鏡(ひてんくはきよう)に梅雨中(はいうちう)亦(また)可扞活(かんくわつすへし)と云
り此物(このもの)又 毒(とく)ありみだりに食(くろ)ふへからす
【二十五行下から五字目~は「可_二扞活_一」ヵ】
【文中の「菫」は下の横線三本が二本になっている】