翻刻
【右丁】
一種
くんばいひるかほ
豆州(つしう)属島(そくとう)大島(おほしま)の海浜(かいひん)
暖地(たんち)に生(せう)す葉(は)は甘藷(かんしよ)《割書:さつま|いも》に
似(に)て葉(は)の先(さき)凹(なかく)ほにして軍配(くんはい)の
形(かたち)に似(に)たり茎(くき)淡紅色(うすあかいろ)にして施(せん)
花(くは)【注①】の如(こと)し蔓(つる)延引(ゑんいん)し節(ふし)々根(ね)を
生(せう)す此物(このもの)蔓草部(まんさうふ)施花(せんくは)【注①】の一種に
載(の)す蘭山(らんさん)先年(せんねん)福州(ふくしう)の蕹菜(いようさい)大
坂へ来(きた)る苗(なへ)の形(かたち)甘藷(かんしよ)に似(に)て根(ね)に
塊(かたま)りなし葉(は)は施花(せんくは)【注①】に似(に)て厚(あつ)し青(せい)
茎(けい)紫茎(しけい)の二種あり紫茎(しけい)の物(もの)を上
とすといへり此者(このもの)恐(おそら)くはくんばいひるかほ
なるへし海島(かいとう)の水辺(すいへん)にあれは正字通(せいしつう)の
水蕹(すいいよう)に近(ちか)し
【左丁】
菾菜(てんさい)【注②】 とうぢさ ふだんさう ふつくさ《割書:本草|和名》
ヘタアルバ《割書:和|蘭》 冬夏菾菜(とうかてんさい)【注②】《割書:物理|小識》
秋(あき)種(たね)を下(くた)し四時(しき)食(くろ)ふへし葉(は)は菘葉(すうやう)に似(に)て叉(また)なく又 萵苣葉(くわきよやう)に似(に)て円(まる)
くして厚(あつ)く夏月(なつ)茎(くき)高(たか)さ一二尺 葉(は)の間(あいた)に短(みしか)き穂(ほ)をなして花(はな)あり藜(れい)《割書:あか|さ》の
形(かたち)に似(に)て大なり和蘭本草(をらんたほんさう)に疥癬(かいせん)に因(よつ)て毛髪(もうはつ)《振り仮名:■落|らつらく》【注③】するものこの
汁(しる)にて頭(かしら)を洗(あらふ)へし又 此汁(このしる)を頭施運(めまい)【注④】耳鳴(みゝなる)に宜(よろ)し用(もちい)て大効(たいこう)あり
【注① 「施花(せんくは)」は「旋花」(ひるがお)ヵ。『本草図譜. 巻25-27』コマ44、45に「旋花」有。コマ44、47には「ぐんばいひるがほ」有。「蔓草部」の「巻25-27」~「巻31-33」(巻33は「水草部」)に「施花」は無。国立公文書館デジタルアーカイブも同じく㋐「施花(せんくは)」、㋑「旋花」(㋐『本草図譜巻之47・48』コマ39 https://www.digital.archives.go.jp/img/4676185 ㋑『本草図譜巻之25・26』コマ41、42 https://www.digital.archives.go.jp/img/4676174)。】
【注② 「菾菜」は「恭菜」ヵ。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①-㋐と同)では「菾」の「天」の下が「氺」。】
【注③ ■は「月+ノノ+ノ巳」・「脱」ヵ。ただしルビが合わず。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①-㋐と同)では「脱」。】
【注④ 「頭施運」は「頭旋運」ヵ。検索すると情報有。】
【八行三字目「似」は別の字の上から書いている】
【十五行三字目「と」は別の字(「し」ヵ)の上から書いている】
【二十三行下から七字目「萵」は「艹+ワ+ヽ+冋」。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①-㋐と同)では「蒿(かう)」。】
【二十五行八字目~「和蘭本草」のルビ「を」は別の字の上から書いている】