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コレクション: STAGE3

安政風聞集 上中下 全 - 翻刻

安政風聞集 上中下 全 - ページ 49

ページ: 49

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 実(じつ)に程伊川(ていいせん)が浪(なミ)風を恐(おそ)れず正(たゞ)しく座せし船中(せんちう)の形勢(さま)に似(に)て取(とり)    静(しづ)めたるを感(かん)ずるなり     扨(さて)も此度(こんど)の風雨に付(つき)て御武運長久顕然(ごぶうんちやうきゆうげんぜん)たる最馥(いとかん)バしき咄(はな)し    を聞(きけ)り此頃異船屡(このころいせんしバ〳〵)来り外国(ぐわいこく)の風(ふう)を聞(きゝ)及バれ武備(ぶび)ハ勿論海上(もちろんかいしやう)    も自在(じざい)を得(え)ん為異国形(ためいこくがた)の船(ふね)さへ数多御造立(あまたごぞうりう)にて大炮船打調(たいほうふるうちてう)    錬(れん)の事など夫〻向〻(それ〳〵むき〳〵)へ仰(おふ)せ下(くだ)る依て御簱本(おはたもと)の両番頭(りやうばんがしら)ハ抽(ぬきん)で武(ぶ)  備(び)の大将(たいしやう)なれバ御新造(ごしんぞう)の船(ふね)に乗(のり)て海上運動(かいしやううんどう)の心見(こゝろミ)なさんと申  合(あハ)せて願(ねが)ハるゝに付其義 上(かミ)にも御許容(ごきよやう)有て御新造の君沢丸(くんたくまる)とや    是を弥御借(いよ〳〵おんかし)あり去ㇽ八月廿四日 既(すで)に出船(しゆつせん)あらんとて先(ま)づ番頭ハ一(いち)    柳播州新見豊州酒井對州赤松左尉(やなぎばんしうしんミほうしうさかゐたいしうあかまつさじやう)の四頭御組下(よかしらおくミした)の御籏本 血(けつ)    気(き)の青春相勝(わかものあいすぐつ)て上下(しやうげ)五拾 有余(いうよ)人 乗込(のりこん)で出給ふ然るに此日船頭(このひせんどう)の      申す昨今(さくこん)の空合(そらあい)にてハ大風雨と見定(ミさだ)めたれバ御出船(ごしゆつせん)ハ御見合せ    然るべしと止(とゞ)めけるに一柳播州(ひとつやなぎばんしう)ハ平日自(へいじつミづか)ら云(い)ひ出(いで)し事 跡(あと)へ引(ひか)ざる  人(ひと)にて同役衆(とうやくしやう)も強情者(がうじやうもの)とて皆々恐(ミな〳〵おそ)れる程なれバ此時 既(すで)に船頭(せんどう)を    呼(よ)び汝(なんぢ)が天気(てんき)を窺(うかゞ)ふ事 数年(すねん)の功者相違(こうしやそうい)有まじさりながら我々(われ〳〵)が     乗試(のりだめ)しとて船(ふね)を出(いだ)すハ安全(あんぜん)をのミ願(ねか)ふにあらず日和(ひより)をのミ見(ミ)て渡海(とかい)    なし荷物(にもつ)を無事(ぶじ)に運送(うんそう)するを旨(むね)とするハ商船(しやうせん)の事 風波(ふうは)を凌(しの)ぎ危(あやう)    きを見(ミ)るも是又一ッの修行(しゆぎやう)にしてこそ風(かぜ)に逢(あハ)んも幸(さいハ)ひの乗試(のりだめ)しの本意(ほんい)    に叶(かな)ひ後(のち)の心得(こゝろえ)とも成(なる)べけれバ《ルビ:早々䌫解放|さう〳〵ともづなときはな》せよと各々如何(おの〳〵いかに)と席中(せきぢう)を白眼(にら)    まるれバ列席(れつせき)中又播州が強言(ごうげん)や止(とゞま)るべきとも思ハれず殊(こと)に理り無(なき)に    あらねバ諸侶出(もろともいだ)せと差図(さしづ)ある故 船頭餘義(せんどうよぎ)なく船(ふね)を出す然(さ)れども    心に覚(おぼ)へあれバ遠(とほ)くハ出さず程(ほど)を見合(ミあハ)せ此辺(このへん)ならバ浪風(なミかぜ)の少々つよく