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夫料理は高きも賤しきも宴をひらくの第一にして
月花の路これを愛ざるはなしあるが中に我
割烹家にひとゝなりて此是に心を委るにいまだ
其奥にわけ入かたしもとより燕雀の如くにして空しく
生涯を過すになんと日夜心を労せしにはからざりき
書肆の献立かいつけてよと乞れしに強ていなみがたく
されども此道に拙ければ鳴呼のわざならすやとわづかに
其ひとつふたつを挙て木に上し料理通と
題して好人の高覧に備ふるもいと恥かはしき事に
なむなんぞ此道を好める諸君子は大鵬の時を
もとめて其奇をえらひ給んかしといふは
文政五のとし季の春荏土日本堤の辺八百善しるす
【左丁】
本膳(ほんぜん)鱠(なます)之(の)部(ぶ)
【春上半分】
けんきんかん けんばうふう
あさひぼら うすつくりひらめ
たつくり極(ごく)せん みる貝(かい)せん
春(はる) 《割書:にんじん|大こん》しらが しらがうど
海部(かいぶ)のり 岩(いわ)たけ
くりしやうが くりしやうが
【春下半分】
けん一夜(や)しほ けん同
うすつくり鯛(たい) さより細(ほそ)つくり
せんあか貝(かい) さきたら
若(わか)しそ めうがたけせん
しらが黒(くろ)くわへ 生(なま)わかめせん
ふくめしやうが くりしやうが
【夏上半分】
けんばうふう けん同
鯵(あぢ)つくり身(み) かれいうす作(つく)り身(み)
夏(なつ) 白くらげ 紅(べに)くらげせん
はすいもせん きくらげせん
いわたけ たけのこ
はりくり きぬかはせん
【夏下半分】
けん同 けん同
すゞきやゑ作(つく)り たいつくり身(み)
まきたいらぎ ほそつくりあゆ
かいぶのり しらが瓜(うり)
めうがのこせん しそせん
わさび極(ごく)せん たでせん