翻刻
【右】
に別ち健全なるものは大院に入れ煩ふ者は小院に入らし
む但 ̄シ此周圍に高さ二十五尺の土塀を造り斷へず番人をし
て其周を見廻らしめたり〇又更に其大院中を別て二個所
とし壮衰の容體により狭き室中に居らしめ夜分は其戸を
閉ぢ白晝は開きて番人を置き此所へ其病院にて試驗せら
るゝ船に乗組せる旅客は時として來ることを差許せり〇船
中にて疫病の萌ある者は速に小院に入らしめ醫師格子を
隔てゝ其容體を窺ひ果して疫症なれは番人たりとも之 ̄レに
接することなく藥劑其外飲食の類は長き棒にて與へたり〇
若 ̄シ煩ふ者死する時は其死骸を鐵製の鉤竿にて車に載せ網
【左】
を付け之 ̄レを引出し深き穴中に埋め其上を石灰にて覆ひ少
くも三十年の星霜を過ぎされば必ず之 ̄レを開くことなし〇其
煩ふ者の室内に在る諸品物は悉く焼捨て酢を以て其跡を
洗ひ清浄にして空氣をよく通はしむ假令煩ふ者本復する
とも病症僅にても存すれば之 ̄レを健全の者として取扱ふこと
なし〇總て病人を運送する船は斷て此所に入るを許さず
尤 ̄モ馬塞里の如く之 ̄レを許すものは其禁法を厳しくするを肝要
とす可し
子安鐵五郎謹譯