翻刻
【右丁】
たれはいよ〳〵心もさはやかにとひたつはかり
におほえたちそれよりふらうもん【不老門】のうち
長生殿(ちやうせいてん)につれゆきて此仙人かたりけるは
いかにこれこそはなんちもさためてきゝを
よひけん不老不死(ふらうふし)のくすりはこの宮中(きうちう)に
こめられてたやすく人にはほとこしあたふ
ることなけれともなんちか心のしひふかく
正ちきにしておやにかうあるその心さしを
かんする故にこれをなんちにあたへんとて
すなはち是をとりいたし瑠璃(るり)のつほのうち
【左丁】
より七ほうのうつはものにうつしいれて安
彦にたひ【お与えになる】てけり安彦これを給はりて今は
いとま申て二たひ故郷にかへらんと申すさ
らは心にまかせよとてやかて舟にをくり
のせ給ひけれは七人の仙女も岸まてたち出
給ひて東門(とうもん)の瓜(うり)南花(なんくは)の桃(もゝ)玄雪(けんせつ)の煉丹(れんたん)【注】を
安彦に給はりぬかくてともつなをときめい海(かい)
にうかひけれはみなみの風 徐々(ぢよ〳〵)と吹て
日本の岸(きし)につきに
けり
【注 古代、中国で、道士が辰砂(しんしゃ)をねって不老不死の妙薬を作ったこと、またその薬】