翻刻
門田の稲葉のそよめくはあしの丸屋の秋風になりと一也 師説に昼は寝寞
たる芦の丸屋也夕に成たれは風の吹く人の音信るやう也と云
祐子内親王家紀伊
音にきく
俊忠卿人しれぬ思ひありその・・・此哥の返し也あたなる人とたかく聞たる
ほとにそのやうなるあた人の浪はかけましき袖のぬるゝほとにと也かけしや
はかけましき中〳〵あたなる人は思ひの種そと也
権中納言匡房
高砂の
眺望の桜と云題也けふよりは霞なたちそ桜が咲たる程にと也霞たち侍ら
は桜をかくすへきと也此哥は判の詞に足つまたてたる哥とかきたると云々
おちつかぬ心かと也 能因か哥よりは文かあると也
源俊頼朝臣
祈(イノレトモ)不逢
うかりける
逢やうにと色〳〵祈リタレハ結句はツレナクはけしく成たるはいかにと泊瀬に
恨たる躰也定家卿哥妙の作意と称歎し給しと也 忍ル恋と俊成
のもあり住吉の物語より初瀬に恋を祈る也 定家の心ふかくて詞を心に任せ
たる哥と也 年もへぬいのる契ははつせ山の類也
藤原基俊
契をきし
僧都光覚維广会の講師を遂し人の父 講師事天台は永宣旨南都
は藤氏の私の下知也 基俊は俊成の師也 新撰朗詠は此人の撰也
千載ニ から国にしつみし人もわかことく三代まてあはぬなけきをそせし
是は卞和【べんか=人名】璧の古事そ 文帝好 ̄ハ_レ文 ̄ヲ臣好 ̄ム_レ武 ̄ヲ景帝好 ̄ハ_レ美 ̄ヲ臣皃醜 ̄シ陛
下好_レ少 ̄ク臣已老 ̄タリ是以三代不遇也
させもか露 よもきの露也 僧都光覚維广会の講師の請を申ける
をたひ〳〵もれ侍けれは法性寺入道前関白太政大臣にうらみ申けるをしめちか
原のと侍ける又のとしももれにけれはよみてつかはしける 十月十日の事也
十月十日ははや秋も皆に成たるほとにことしの秋も又講師の請にもれ
たる事あはれなるよと也維广会十月十日ヨリ十六日まて也
《割書:此第 宇治左府頼長公ハ詩哥ハ優立ノ|道国ヲ治ル用ニハ不立トテ終ニ不称云々》法性寺入道前関白太政大臣
わたの原