翻刻
海上眺望の歌也辺頭上皆ほとり也上ノ字は海路ノ心アリ祇説【宗祇説ノ意ヵ】眺望
ノ哥ハ景気にてはてたる物也 春水舩如座天上ト云名ハ我也是はうち
からみたる也 漕出てみれはニ力入たる也今朝出たる事も不見行さきも云え
ぬ也秋の長天ト共ニ一色也ト云たるト同し わたの原ハ海也みえたる躰也
舟を漕出テみれは白波か雲にまかふ躰たゝ眺望也
崇徳院
せをはやみ
早き瀬の岩にせかれて落るやうに我思ひもせきあくれはわれて末にあふ様
に我もあはんと也 われてはわりなくして也 又ノ義ニハ別てもとみるへき也岩ニ
せかるゝかわりなくして也又別てはいくすちに成ても也我なからはかなき心ト身をせめたる哥也
源兼昌
あはちしま
関路千鳥と云題也須磨の浦ニ旅ねヲシテ度々千鳥の鳴を聞て旅は只サヘ
ね覚かちなるに所はすまにて海士の家たにまれになんと源氏にもかける所
なれはわか一夜さへあるに関守はさこそとあはれみたる也此ぬはをはんぬ《割書:にても|なし》又ふのぬにても中〳〵なき也 也足云此心ハいく夜ねさめぬらんと云義《割書:なる|へし》
左京大夫顕輔
秋風に
是を只いつもの月とみれは曲ナシ雲ノ絶間カラ見レハ一かと【一廉】心かさてト驚キ
テ面白ク一段ト影もサヤカナルヤウナルト也悪キ事アレハ善事ヲ思知心ソト也
新シク光ノアル所也 上句か詮也春の句えは雲も霞ニうつもれ又陶淵明【三字見消 右に東坡也】か
夏雲【○の横に多が付記】多_二奇 ̄峯_一ト云 冬は猶かはる也 秋は八月・・・ 雲か乱るゝ物也うき〳〵
と浮立たる雲かおほき者也 源氏に雲かくれたる月の俄にさし出たる
と書たるニ同し雲ナキ晴天ヨリモ光アリ 月 ̄ハ在_二浮雲 ̄ノ浅 ̄キ処_一 ̄ニ明 ̄ナリ【左に朱で「ハ」「アリテ」「ウンニ」「アサキトコロアキラカナリ」――返点変更ヵ】ト同心也《割書:■|■■》
《割書:小路名ヲツクハ一段賞翫ナリ仙洞ニテハ|上臈分ヲ衆チ■■■■■》
待賢門院堀河
なかからん
後朝恋也本集ニハ恋ノ歌と計【ばかり】あり千載にては後朝也集をみる法に
題に准する也 心はなかく契り末まてとをらんもしらね共けさは只心も乱て
物を思ふそとの心也 我心のはかなき也人のなをさりことせんもしらすしてわか
あやまりの有そめしか曲事也なかヽらんは人の心乱てはわか心也
後徳大寺左大臣【左に、「コ トク ダイジ ト■ツクル也」】【下に】惣別ハ天子ノヲ後(コ)ヲ|音【?】ニ云ソ》