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湯津(ゆづ)の爪櫛(つまぐし)つげの小櫛(をぐし)は両天(りやうてん)秤の二柱(ふたばしら)
梅花(ばいくわ)のかをる神代(かみよ)にはじまり順(じゆん)が和名(わみやう)の
細櫛(ほそぐし)さし櫛(ぐし)いひ出(いで)んも事(こと)ふりたれど鎌倉山(かまくらやま)
の真砂形(まさごかた)はかもしの長(なが)く世(よ)につたはり
室町御所(むろまちごしよ)の簾櫛(すだれぐし)はびなんかづらの香(にほひ)に
残(のこ)れり薩摩(さつま)長門(ながと)の国産(こくさん)は慶長(けいちやう)に名高(なたか)く
丸峯庵形(まるむねいほりがた)は元禄(げんろく)に聞(きこ)えたりそれより益(ます〳〵)
新奇(しんき)を巧(たくみ)朝日(あさひ)ととなへ三日月(みかづき)とよび蒔絵(まきゑ)
彫物(ほりもの)の手(て)を尽(つく)せどいまだ其鑑(そのかゞみ)とすべき
絵本(ゑほん)は絶(たえ)て世(よ)に見えずさる故(ゆゑ)に書肆(しよし)永寿堂(えいじゆだう)
前(さきの)北斎為一(ほくさいゐいつ)にあつらへ品々(しな〳〵)の絵様(ゑやう)をかゝせ
末(すゑ)に□(きせる)の図(づ)を添(そへ)て櫛□(せつきん)雛形(ひながた)と題(よび)
是等(これら)の物(もの)をつくらしむるもろ人の
助(たすけ)とす其(その)ことわりをはじめに記(しる)すは
文政壬午 柳亭のあるじ
秋八月望 種彦なり