翻刻
漸此難所を越てしはらく息を
つきてあとをみては
雉子の声に山下ろゝと崩れけり
時国より弐十五町本馬三十三文軽尻
真浦 弐十文人足十文家数三十軒斗有
権兵衛抔とて能き百姓あり
此辺は西海の郷といふ中にも辺鄙の片浦は
なり前は蒼海漂々として後は石倉の山峨々
たり左はひろきの岨端(ソハ)巌々せり右は朴坂の
峠嵩々とありて誠に閑静いわんかたなし
御塩蔵の傍に薬師堂あり丈六の金色の大像
なりいつの頃より安置といふ事しれす其外にも
又仁江村近し朴坂峠越へは弐十丁有友定と
いふ百姓有清水村八町有皆塩師にて御塩蔵
所々にあり此所は難所多く道砠敷といへ共山水
の詠 す塩かまの躰岩間の人家の風情