翻刻
又となき難所也是と曽々木御塩蔵の腰ゟ礒
の岸壁の半途をへる也高は山砠敷屏風を
立たることく下は数丈の大海也出口に大成洞有
波打入る時は響きて雷のことし是にも気
■れて凄きこと也此洞は福穴とて役の行
者の護摩を焼給へる洞といへり奥しれす此洞の
口を波間をかんかへ向の岩に走り上る也夫ゟ
壁石に手懸り足掛り懸り有是を能見て取つき踏
つて歩むこと也気■て手懸り足懸りも
見へす又或は梯子とて岩を割たる所あり是を
登り下る也迚も此通の有様筆にも尽しかた
し我等も物語にとおもひ通り伝しに聞にも
増さる難所也気おされては前後荒しふたゝひ
通るましき所なり併所の者は道の近きにめ
てゝ■負ひ抔して通る也されともあやまち有
て死せし者多し然るに近年安永年中より
片岩村海蔵寺隠居の発願にて各越伐広け
余程往来安しなりしと也