翻刻
一宮鳥時より流れ出たる川上にて松魚をも取しと聞秋より冬へ
入大なる砂魚を釣る《割書:長五|六寸》一人に何百といふ数をしらす堤御普
請有し切戸の内に鯔落集る事おひたゝし釣人工夫して釣
針を集め鯔を懸る事をはしめたるに是又一人か懸上る事何
百を以て数ふ此節は昼夜の差別なく懸取る事前代未聞珍ら
しき事也かゝる天数の世に生れ合たれとも禍を免れ殊に稀
なる齢までも長らへし冥加に古風斬の閑室に筆を取老駑
の繰言なから末世の話の種にもあれかしと益にもならぬ
事ともをも記せしは孫々か為にせし事ぞよ
〇今度の高潮に女童等驚たれとも宝永に比すれハ到て低し
左の旧記を見て知るべし又震の分量ハしられさるものなれ共
潮につるゝものと聞ハ宝永ハ震の強かりし事是又しらるゝ也
再云左に参考する旧記ハ悉く宝永の変記なり
○谷陵記《割書:奥宮正|明華記》に云津波昼夜十一度打来る也゜潮北ハ
一宮仁王門まて゜南ハ雪蹊寺の院内迄゜
○南路志《割書:武藤致|和撰》に云高智新町商人町半分ゟ東ハ悉く
潮入゜《割書:実云今の新町にハあらて|新市町蓮池町迄の事歟》御侍町も堀部七太夫殿蔵人殿
あたり迄潮のまへ゜大道乳のひつはりへ迄海に成゜尤廿日
頃ゟ潮間にハ大道を通ル事有゜
○聞出文盲《割書:中島重右|衛門筆記》に云高智地形ゟ二丈も潮高キ程也◦