翻刻
者は引潮にゆられ或は五台山吸江莇野秦泉寺の磯に
上るも有◦此頃大門筋帯屋町下一丁の内投網或はすくひ
網にて海魚数多取也又愛宕山の麓にては鯖鱩王
余魚なと夥しくとる◦
〇丁亥変記《割書:津野山々長山|丹次葦記》に云未の上刻より大潮溢れ入人家悉く
流れ死人桴を組かことし昼夜潮入来る事明る五日の暁迄
十二度也◦
〇羽根浦八幡宮板の書付に云未刻俄に磯より沖へ三丁余も
潮干其大潮入家の財宝悉く流失不達者成者或は
山遠き者は残らず大潮に被引取死◦
〇志和浦武村孫平の葦記に云良暫く経て大海汀の波
そひへ立て津浦に打入人家の財宝悉く浪中に沈貴賤
男女に限らす波に漂て苦しむ多し◦
〇神谷荘屋家記に云前代未聞の大地震御国中浦々
残らす大潮入◦
〇予の家の伝説に宝永の津波松か崎を打越し巴堤を
押切新町へ溢入其勢ひに三ッ頭に積たる材木又は何
間歟有宍両なと何百本となく押込散乱すたま〳〵
大震に残り半潰の家蔵も是か為に打乱され微塵に成て
流失したれは新町は枝木の外残る物なく満々たる海